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2022.05.11

パーパス起点のCX設計

#グローバルトレンド#コラム

高野礼生 高野礼生
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昨今、経営・マーケティングの文脈において「パーパス」というキーワードが注目されています。

SNSやデジタルの発展により生活者がより主体的に商品・サービスを選択できるようになった状況下では、サービスそのものだけではなく、企業の掲げる「パーパス」も選択の材料となりえます。

また、パーパスを起点にCX(※顧客体験)を考えることで、生活者とより深いコミュニケーションを行い、長期的な関係性を築くことができます。

パーパスは策定して終わりではなく、社内外に浸透させることが重要です。 では、どのようにパーパスを策定し、CX観点からアプローチしていったらいいのでしょうか。

本記事では、パーパスの定義とその考え方に加えて、パーパス起点で顧客体験向上を考える際のアプローチについて紹介します。

パーパスとは

近頃はバズワードとして捉えられてしまうことも多い「パーパス」ですが、そもそもどのように定義されているのでしょうか。

パーパスとは、「企業やブランドの社会的な存在意義」を表現したメッセージのことです。

言い換えるとパーパスは、「自社の存在意義は何か?」「自社の社会的責任は何か?」という2つの問いに答えるものであると捉えることもできます。(出典1

似た概念として「ビジョン」「CSR」がありますが、それぞれ「パーパス」と異なる点があります。

ビジョンは企業が将来に向けて目指す理想像を示すのに対して、パーパスは社会課題や創業時の想いをもとに「今、何をすべきか」を示すメッセージであるという違いがあります。

またCSRはあくまで企業活動の一部であるのに対して、パーパスは全ての企業活動の中心に存在する概念であるという違いがあります。

図1:パーパスの定義
図1:パーパスの定義

例えば、図2のようなHPを見たことはありませんか?(出典2

ソニーグループのコーポレートサイトでは、事業紹介や会社概要、歴史といったコンテンツへのハブとなるページの最上段に企業のパーパスを提示しています。

 図2:ソニーグループのパーパス
図2:ソニーグループのパーパス

このように、パーパスは企業全体に共通するメッセージであるということを表しています。

パーパスの重要性が高まる背景

パーパスの重要性が高まっている理由として、3つの背景が挙げられます。(出典1

1つ目の背景は、生活者が企業・ブランドを選ぶ基準の変化です。

より多くの生活者が消費を通じて自分自身のスタンスを表現するようになっていると指摘されています。

例えば、世界最大のPR会社Edelmanが2018年に8カ国(ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、日本、イギリス、アメリカ)の生活者を対象にした調査では、政治や社会課題に対するブランドのスタンスをもとに購入の意志決定すると答えた人が3分の2にのぼったことが報告されています。(出典2

また、弊社の「YNGpot.™」(※注1)が2021年に国内の生活者を対象に実施した調査では、「自分がどのような商品・サービスを利用しているかは、自分らしさを表現する上で重要だと思う」と回答した割合は大人世代(35-59歳)が43%であったのに対し、Z世代(15-24歳)とミレニアル世代(25-34歳)ではそれぞれ55.0%、51.5%だったと報告されています。 (出典3

つまり、消費を通じた自己表現意欲の高まりが特に顕著にみられるのは20-30代を中心とした若い世代であり、企業やブランドのスタンスは生活者にとっての職業の選択、すなわち将来的な企業の採用にも影響を与える可能性があります。

2つ目の背景は、社会の変化が予測困難になっていることです。

具体的には今まさに直面しているコロナ禍に見られるように、社会環境の変化が急速かつ予測が困難になっていることが挙げられます。

この変化により、企業にとって将来を見据えた中長期のプランを描くことが困難になっています。

そこで、創業時の想いも踏まえた社内の共通認識を作り、社会環境の急激な変化にも柔軟に対応できるようになるため、パーパスの重要性が増しています。

3つ目の背景は、企業の競争環境の変化です。

企業の競争において、サービスや商品の機能的価値は模倣されやすくなっていることは長年指摘されています。

生まれた時からデジタルデバイスとそれらを活用した体験に慣れ親しんだデジタルネイティブ世代の登場により、体験価値での差別化も将来的には困難になるでしょう。

歩んできた歴史といった唯一無二の要素をもとに自社の存在意義を見直し、商品や顧客体験に反映することが、他社との差別化を図る上で求められるのではないでしょうか。

また、ESG投資(※注2)の機運は日本でも高まっており、パーパスの策定・推進を通じて金融機関・投資家に対しても企業の価値・可能性を表明することが、企業の競争力を維持する上で重要になるでしょう。

これらの3つの変化を背景にパーパスはその重要性を増し、多くの企業が策定に向けた取り組みに積極的になっています。

※注1:デジタルネイティブ世代に特化した事業開発・マーケティングの専門チーム
※注2:従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のこと
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/esg_investment.html

パーパス起点のCX設計

ここまではパーパスの定義や注目される背景を説明してきました。
パーパスは策定して終わりではなく、具体的な行動やそれを生活者に伝える取り組みにつなげていくことが重要です。

ここからは、パーパスをCXの向上につなげるための方法について説明します。

パーパスと一貫性のとれた顧客体験の構築

まず、CXの向上につなげるためには、ユーザーインタビューやカスタマージャーニーの作成を通じて理想的な顧客体験とパーパスの整合性を見直すことが重要になるのではないでしょうか。

最初からSNSや広告といった個別の接点におけるコミュニケーションを実施してしまうと、その他の接点において整合性がとれておらず、パーパスがうわべだけの表明だと生活者に捉えられるリスクが生じてしまいます。

そのため、オンラインとオフラインの双方の接点を統合し、顧客視点で設計された長期的なコミュニケーションの重要性は一層増すと考えられます。

家具メーカーIKEAにおけるパーパス起点でのCX変革事例

パーパスとの一貫性がとれた顧客体験を提供している企業の例として、家具メーカーのIKEAを見てみましょう。

IKEAは企業の存在理由を、「より快適な毎日を、より多くの方々に」と定義しています。(出典4

またお客様に家具を提供するだけでなく、ビジネスを通じて「素材の調達先である地域社会から、お客さまのよりサステナブルな暮らしまで」広い視野でポジティブな影響を与えたいと明言しています。

そのためには「優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニッシング製品を幅広く取りそろえ、より多くの方々にご購入いただけるようできる限り手ごろな価格でご提供すること」を達成すべき目標としています。

実際、IKEAの製品の機能性およびデザインと、それらの魅力をお客様が実際に体験できる店舗を郊外に展開することによって、上記の目標に対する取り組みを伝えてきました。

近年では、郊外の店舗にとどまらず都市型店舗の展開や、ECサイトやWebサイト内のデジタルショールーム、SNSを活用したソーシャルコマースといったように、オフラインとオンライン双方の接点を強化しています。

「特定の商品を購入したい人」「車を持っていない人」「自分の部屋を見ながら家具の購入を検討したい人」といったあらゆる背景を抱えたお客様がいつでもIKEAの店舗が提供してきた価値を体験できるようにし、存在意義である「より快適な毎日を、より多くの方々に」を実現しようとしているのです。

さらにIKEAは、お客様が欲しい家具と出会い、購入し、使うまでの段階をゴールとするのではなく、より長期的な顧客体験を構想しています。

その一例として、IKEAは2030年までに循環型のビジネスに転換し、お客様に対してもサステナブルな消費を促すことを目標として宣言しています。

家具を使った後の体験も見据えた結果、既に日本を含め家具の買取り・引取りサービスを展開し、イギリスのロンドンの店舗ではお客様に対して家具の修理技術を教える「learning lab」を展開しています。

  図3:IKEAの「learning lab」
図3:IKEAの「learning lab」

従業員と協働したパーパス策定

ここまで、パーパス起点でCXを変革することの意義について紹介してきました。 では、真にCXの変革につながるパーパスを策定するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。

パーパスの策定及び実現は経営層だけで行うのではなく、さまざまなステークホルダーと共に取り組む必要があります。 ステークホルダーとしては従業員・サプライヤー・顧客・地域コミュニティなどが挙げられますが、まず第一に協働すべきなのは従業員です。

従業員一人一人が自分ごととして捉えられるパーパスを策定することで、組織変革が加速し、顧客への提供価値の向上にもつながります。 そのために、策定段階から従業員と協働することが不可欠です。

パーパスの策定は、自組織・社会の探索から始まり、それらの統合と言語化を経て具体化というように進みます。(出典1

実際に従業員と協働したパーパス策定によって成功している事例として、ソニーの取り組みが挙げられます。

ソニーグループ株式会社 広報部 シニアゼネラルマネジャーの今田真実氏へのインタビュー記事によると、ソニーは社員からも意見を集め、社員と対話を重ねたり、各事業のマネジメント層とも議論したりしてパーパス策定を行ったそうです。

また、策定後は社内のWebサイトで「My Purpose」という特集を掲載し、社員自身がパーパスをどう捉えているか、業務の中でどう実践しているかを紹介しているそうです。

これらの取り組みを通して、今田氏は「今は1人1人がPurposeを念頭に『自分はこうしていこう』と考える文化が醸成されつつあると感じています。」と述べています。(出典5

図4:パーパス策定プロセスの全体像
図4:パーパス策定プロセスの全体像

おわりに

本記事では、パーパスの定義や重要性が高まっている背景や、CX観点でのアプローチ方法について紹介しました。 従業員一人ひとりが自組織と社会を見つめなおしながらパーパスを策定していくことで、組織変革がスムーズに行われ、よりよいCXの提供にもつながります。

CXの変革を考える際には、まずは自社の「パーパス」から考えてみてはいかがでしょうか。

出典・参考URL

出典1:NewsPicksパブリッシング, 岩嵜博論、佐々木康裕(2021)パーパス「意義化」する経済とその先

出典3:株式会社電通デジタル(2022)プレスリリース デジタルネイティブ世代の「自己表現消費」傾向が強化-コロナ禍で変化したデジタルネイティブの消費・価値観調査 ’21-
https://www.dentsudigital.co.jp/news/release/services/2022-0119-001225
出典4:イケア・ジャパン株式会社ホームページ
https://www.ikea.com/jp/ja/this-is-ikea/about-us/about-ikea-japan-pub3c09f721

出典5:ブランド戦略&マーケティング情報メディアCCL.「ソニーグループのPurpose経営」(公開日:2021.08.18)

https://consult.nikkeibp.co.jp/ccl/atcl/20210818_1/

高野礼生

高野礼生

DXディレクション事業部

2021年に電通デジタル入社後、通信会社のデジタルマーケティングの支援に従事。ソーシャルメディアの運用ディレクションや、WebサイトのUX改善に関わる業務を担当。

※所属は記事公開当時のものです。

濱藤柚香子

濱藤柚香子

DXディレクション事業部

2020年に電通デジタルに新卒入社。​ ユーザー起点でのサイトディレクションやユーザーテスト、アンケート設計・分析業務、ワークショップ設計・運営業務など幅広い支援業務に従事。

※所属は記事公開当時のものです。

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