SHARE

NEW 2023.01.17

ノンデザイナーからのUXデザイナーのキャリアの積み方~社内の若手UXデザイナー3人による座談会~

#UXデザイン#エクスペリエンスデザイン#コラム

堀田裕介 堀田裕介

「デザイン」や「デザイナー」という言葉を聞くと、美大出身のいわゆるビジュアルデザインなどの素養がある人が行うものでは?と思われる方が多いかもしれません。

しかし、電通デジタルでは、そのようにデザインを本格的に学んだバックグラウンドを持たない多くの社員が、UXデザイナーとしての役割を担い、さまざまなUXデザインに携わっています。

本記事では、日々UXデザインに携わっている社内の若手3名による、UXに関する考え方やキャリアの積み方についての座談会の様子をお届けします。

インタビュイープロフィール
インタビュイープロフィール

入社までの経歴と入社のきっかけ

今回お話をお伺いしたのは、電通デジタルに入社して5年前後の若手社員3名です。
まずは学生時代にどのようなことをされていたのか、そして入社に至ったきっかけをそれぞれお聞きしました。

西湧太(以下N)
「大学では英文学を専攻していました。そのかたわら、ウェブサイト制作のアルバイトや子どもたちにプログラミングを教えるインターンをしていました。

また大学時代にマルタ共和国に1年間留学をしていたのですが、そこは日本から約1万kmも離れた小さな島国なのに、日本の車や電化製品、日本食などをたくさん目にしました。

日本を飛び出すことによって改めて、日本のものづくりや技術の素晴らしさを再認識しました。その素晴らしさを、デジタルの力を使うことでさらに広めて行きたいと思うようになり、就活の軸をデジタル系の会社に定め、消費者と近い距離で関わることができると考え、電通デジタルに入社を決めました。」

田中秀斗(以下T)
「大学ではマーケティングを専攻していました。これまでデザインについて学んだ経験は一切なく、絵を描くことも昔から苦手でした。

大学時代にやっていたダンスの活動で、自らが舞台に立って踊るよりも、自分が作った振り付けなどを仲間が踊っているのを舞台袖で眺めるほうが楽しかったという経験がありました。

そこから、自分が全面に立って目立つよりも、周りの人をサポートすることに興味があると気づき、様々な分野のビジネス支援や、課題解決を行いたいと思うようになりました。大学で学んだマーケティングも活かせるという点で、電通デジタルの前身である電通イーマーケテイングワンに入社しました。」

金城茜(以下K)
「大学では私もマーケティングを専攻していました。大学卒業後は台湾に渡り、1年ほど映像制作会社のインターンをしながら中国語を勉強しました。

その後、日本で働きたいと思い帰国し、UI/UXデザインを専門とするベンチャー企業へ就職しました。はじめはUXについては何も知りませんでしたが、広報などの仕事をする傍ら、UXデザインの仕事にデザイナーとともに携わるうちに 、マーケティングの考えを応用しながら、UI/UXに主体的に関わってみたいと思うようになりました。

そのような考えをもとに転職活動をしていると、電通デジタルに出会いました。ここなら自らが主体となってUXに関わりながら、多くのことを学べるのではないかと思い、入社を決めました。」

イメージ画像
イメージ画像

入社してから獲得したUXスキル

入社までのバックグランドとして3人に共通したことは、デザインを本格的に学んだご経験がないということでした。
ではそこから、UXデザイナーとして活躍する現在に至るまで、一体どのようなスキルを身につけていったのでしょうか?

(T)
「私が入社した2016年当時は、中途採用がメインだったので、新卒を育成するノウハウやプログラムなどがしっかりと確立されていませんでした。そのため新卒入社した私は、実際の業務の中で仕事を学んでいきました。そのなかで、論理的思考力やクライアント対応力をはじめとする様々なビジネススキルが身についていったと感じています。

UXに関わるスキルとしては、共感力みたいなものが身についたと感じています。ユーザー調査などをしていると、様々な発言や行動がユーザーによって見られます。たとえそれらが自身の考えと異なっていたとしても、そこで見切りをつけるのではなく、なぜそのような発言や行動に至ったのか?と疑問を持ち、そのユーザーのことを客観的にもっと深く理解しようとする癖が付きました。」

(N)
「私は入社してまず、ビジネスコンサルティングを行っている部署に配属されました。 はじめはビジネス戦略を考えることをメインとした案件に参加することが多かったですが、だんだんとUXデザインを行うプロジェクトにも参加するようになりました。

そのなかで身についたと思うことは、田中さんと重なりますが、ユーザーのことをきちんと知ろうとする姿勢や共感力です。UXデザインのプロジェクトでは、ユーザーに対するリサーチをしっかりと行い、そこから得られたインサイトをもとに戦略やサービスを考えていきます。ユーザーはときに私たちが想像しえないインサイトを与えてくれます。だから、ユーザーの生の声に耳を澄ませて聞くことはとても重要だと思っています。

また最近では、だんだんと後輩を育てる立場にもなってきたので、後輩の良いところを活かしながら、プロジェクトを円滑に進めていくスキルも徐々に身についてきたのかなと感じています。」

(K)
「私は前職で、デザイナーに囲まれてUXに触れ始めたため、UXはデザイナーがやるものだという固定観念がありました。しかし電通デジタルに入社して、UX関連の案件を一通り経験してみて、自分にもある程度UXに関する知識やスキルが身についてきたのかなと感じています。

その中でも特に、調整力やコミュニケーション力が向上したと思っています。UXコンサルタントとして案件に入ると、最終的なアウトプットがウェブサイトであることが多いのですが、その際に開発側とデザイン側という専門性が異なる役割同士をうまく連携させ、同じビジョンを持って成果物の精度を高めていきます。そのなかで重要なのが、調整力やコミュニケーション能力です。これまでの経験からそれらのスキルは自ずと身についてきたのかなと思います。

また、ユーザーのインサイトから考えた案をクライアントに説明するときにも、プロの視点による考えとして納得していただくコミュニケーション能力は必要ですし、その中で論理的な思考やアウトプット能力も育まれていると思います。」

イメージ画像
イメージ画像

UXデザイナーとしてできることとできないこと

共感力や論理的思考力、コミュニケーション能力など様々なスキルを、実際の業務を通じて身につけられたことをお伺いできました。
しかしながら、やはりUXデザイナーとして得意とすることと、ビジュアルデザインの専門家が得意とすることは、異なるように思えます。皆さんが考えるUXデザイナーとしてできることとできないことは、それぞれどのようなことでしょうか?

(K)
「できることとしてはまず、ベストプラクティスを転用したUIの設計があります。ベストプラクティスを転用することは、決して間違ったことではなく、説明をしなくともユーザーに直感的に理解してもらうというUXを実現する上で、むしろ重要なことだと思います。ただ一方で、なかなかそこから抜け出せずに、斬新なUIを設計することは、グラフィックデザインを本格的に学んでいないことが原因かはわかりませんが、難しいのかなと思います。」

(T)
「確かにそうですね。とても洗練されたページなどを見て、こういうデザインができたらいいなと思うことはありますが、それをデザインにまで落とし込むことは難しいなと思います。設計的な目線で良いデザインの骨組みを参考にワイヤーフレームを描くことはありますが、それ以降の細かなデザインの調整は、ビジュアルデザインの専門性が必要だなと感じます。」

(N)
「私もおふたりと同じ意見です。そのようなビジュアルデザインに長けたデザイナーは社内に多く在籍しているので、お互い役割分担をしながら協働してプロジェクトに当たることが多いですね。」

(T)
「できることとしては他に、既存のデザインに対してレビューすること、何が良くて何が悪いのかを評価することがあると思います。これまで様々なデザインを見てきた経験に加えて、ユーザーの属性や利用する文脈、デザインが出来上がるまでの経緯などを考慮した視点から、UX的な良し悪しを判断することは、得意分野なのかなと思います。」

(N)
「成果物に対してクライアントから合意を得るために、プレゼンの軸を決めたりUXを言語化したりすることも重要ですよね。先ほどのコミュニケーション能力と被りますが、ただUXをデザインするだけではなく、それをきちんと実現していく実行力的も備えているのかなと思います。」

(T)
「確かに、クライアントと日々やり取りをしているなかで、きちんとクライアントからの要望を聞いて、それを言語化し、具体的なプランに落とし込んで、必要に応じてリサーチを行い、骨格や構造を考え、それをデザイナーに連携するという一連の流れを実現するためのスキルは非常に大切ですよね。」

イメージ画像
イメージ画像

UXデザインにおいて大切にしていること

単にUXをデザインすることにとどまらず、各関係者と綿密にコミュニケーションを取りながら、描いたUXを現実のものにしていく一連の流れ全体が、UXデザイナーの役割になり得るということでした。
それでは次に、それぞれがどのようなことを大切にしてUXデザインを行っているのかを教えてください。

(N)
「どんなUX案件もクライアントがいて、そこにはクライアントの思いが必ずあります。私たちはユーザーの声を聞くと同時に、クライアントの声にもきちんと耳を傾け尊重することが大切だと思います。UXのUはもちろんユーザーのことを指しますが、それにはクライアントも含まれるということを意識しています。

それはつまり、ユーザーファーストという言葉に踊らされすぎてはいけないという思いです。どのプロダクトやサービスにも、必ずクライアントのアイデンティティや思いが込められています。それを無視して、ユーザーがこう言っているから全てユーザーの言う通りにするというのは、必ずしも良いこととは限らないからです。もちろん、ユーザーの声を尊重しつつも、同時にクライアントの思いも尊重し、そのバランスを取っていくことを大切にしています。」

(K)
「企業側が顧客に対して、どのような体験を提供したいかを考え、それを実現していくということですね。例えば、アップルストアでのフレンドリーな接客や、スターバックスでの心地良い接客などがそうですよね。」

(N)
「そうですね。それらはまさに、ユーザーの声から生まれたものというよりは、企業側が顧客に対して提供したい体験やブランドの世界観を実現したものであり、顧客がそれを受け入れている良い例だと思います。」

(T)
「私も西さんと同意見です。ユーザー視点とビジネス視点、この2つのバランスを取っていくことが、UXデザイナーとして大切にすべきことだと考えています。ユーザーに対する調査を行い、その結果としてファクトを述べるだけでは、ただのリサーチャーというかインタビュアーに過ぎません。重要なのは、調査をして得たファクトを解釈して、その裏側にある背景や意図を読み解くこと、そしてそれらをクライアントの思いと掛け合わせ、何がユーザーにとって最も良い体験なのかを考えて案に落とし込むことだと思います。

ユーザーの声から、単純にベストな案を導くだけでは、最終的に絵に描いた餅状態、つまり実現することなく理想論としてお蔵入りになってしまうことは往々にして起こり得ることだと思います。なので、ユーザー視点とビジネス視点のバランスを踏まえた、実現可能なUXを考えていくことを大切にしています。」

(K)
「私はユーザーを深く理解することを大切にしています。また、それは身についたスキルでもあります。UXに触れたはじめの頃は、ターゲットとするユーザーと自分に共通する部分があり、自身の体験をうまく活かすことができました。しかし、それではすぐに壁にぶつかってしまいます。例えば、ターゲットが自分と何一つ共通要素がないとなると、戸惑って先に進めなくなってしまうのです。

しかしそこを乗り越えること、つまり主観を脱することではじめて、より深いユーザー理解ができるようになります。ターゲットとなるユーザーを自分に憑依させるくらい調べ尽くして、背景に潜む言語化されていないところまで深掘って分析するようにしています。」

(N)
「自分も気づいたらいつのまにか高校生のギャルになっているような感覚になる時がありますね(笑)」

イメージ画像
イメージ画像

ユーザーとクライアントの両方の視点を兼ね備え、それぞれの声なき声までに耳を傾け、お互いを深く理解をすること。その声をもとに、お互いのバランスを上手く取りながら、あくまで実現可能な形へと落とし込んでいくこと。より良いUXデザインが生み出される背景には、このような表には出て来ないプロセスが潜んでいることがわかりました。

今後の目標

それでは最後に、UXデザイナーとしてさらなる成長をしていくための、今後の目標をお伺いいたします。

(N)
「田中さんが先程述べていたことですが、やはり絵に描いた餅ではなく、もっと実質的というか実際的な戦略を立てられるようになりたいと思っています。また、クライアントだけではなく、様々な方の懐にずぶずぶと入り込み、頼りにされる人になりたいなと思います。」

(K)
「あらゆるものがサービス化している今、自分のスキルをUI/UXの領域から更に広げていきたいと思っています。例えば、近年では電力自由化により、市場では熾烈な争いが繰り広げられています。そのような状況において、従来のUX的な考え方だけでは限界があると感じています。

電気は供給されていて当たり前というように、そこではユーザーが課題意識を持っていない場合があります。そのため、従来のユーザーの課題意識を調べて行っていたアプローチが、そもそも課題意識がないため成立しない場合があるからです。なのでこれからは、自身の専門性をUXから押し広げ、そのような状況にも対応できるスキルを身に着けたいと考えています。」

(T)
「UXのデザインプロセスは幅広いため、その全てにおいてのプロになることは難しい反面、ひとつの専門性だけを有しているだけでは、すぐに分野のスペシャリストに取って代わられてしまいます。

また、UXデザインが当たり前になってきた昨今において、もはやUXデザイナーという肩書自体が古いものなのかなと感じています。もちろん、ユーザーの体験をデザインするという事自体に変わりはありませんが、これからはUXリサーチや金融業界など自身の専門性や得意分野に強みをもちつつ、広くUX全般の知識とスキルを身に着けた、T型人材もしくはπ型人材になりたいと考えています。」

入社した当時は、UXデザインについてほとんど経験がなかった3人が、現在では一人前のUXデザイナーとして活躍し、UXを起点として自らの専門性や活躍の幅をさらに押し広げていく未来を見据えています。今回の座談会から、たとえ本格的にデザインを学んだ経験がなくとも、ユーザーとクライアントを深く理解することで、よりよいUXをデザインし、UXデザイナーとしてのキャリアを積み重ねていくことができるのだと、実体験をもとにお伺いすることができました。

堀田裕介

堀田裕介

CX/UXデザイン第1事業部

2020年に電通デジタル入社後、銀行や製薬会社のサイトのリニューアルなど、情報設計を中心としたUIUX業務に携わる。調査の設計・実施や、施策立案などの案件にも携わり、 UIUXデザインおよびコンサルティングに関わる業務の幅を広げている。

※所属は記事公開当時のものです。

RELATED REPORT

EXPERIENCE+は、株式会社電通デジタルが運営しているUXデザインメディアです。

ビジネスに役立つUXデザインのナレッジ・ノウハウについて、コラムやインタビュー、
体験レポートや書評コラムを通して発信しています。

サービスの詳細や詳しい説明をご希望の方は、こちらのボタンよりお問い合わせください。

CONTACT お問い合わせ