
NEW 2025.05.30
【後編】AI同士で対話?生成AIだけで”グループインタビュー”やってみた
1.UXリサーチに生成AIは活用できるのか
昨今、様々な分野で生成AIの活用方法が進化しており、以前こちらの記事でもご紹介したようにGalileo AIのようなツールも登場してくるなど、UXデザインやUXリサーチの分野での活用も進んでいます。
今回はその中でも、特にリアルな人間同士の掛け合いによって思わぬ視点や洞察を導き出す”グループインタビュー”に焦点を当て、「今の生成AIはどこまでリアルな人間同士の対話や生の声を表現できるのか」を、電通デジタルのUXデザイナーたちで模索してみた結果をご紹介いたします。
また今回の記事は前編と後編に分かれています。
前編では、タイトルの通り生成AIだけでインタビューを行ったプロセスや結果をご紹介します。
そして後編(※本記事)では、その結果を電通デジタルの現役UXデザイナー / リサーチャーに共有し、「生成AIによるインタビューデータは実際の業務に使えそうか?」について ディスカッションした内容をご紹介します。
どちらも興味深い内容だと思いますので、ぜひご覧ください!
<インタビュイープロフィール>
・須賀 健斗
事業会社を経て、2023年電通デジタルに入社。定量調査・定性調査を行いながら、複数の業界で顧客体験設計や効果検証、新規サービス開発に携わる。
・福澤 るり
UXコンサルタントを経て、2022年電通デジタルに入社。定性調査を行いながら、幅広い業界でサイト・アプリ改善や新規サービス開発などに携わる。

2.インタビュー実施とAI活用の経験
ーはじめに、お二人が直近で携わっている業務と、これまでの定性調査のご経験を教えてください。
・須賀 健斗(以下S)
「直近では、自動車会社様のサイトリニューアルに伴う画面設計や、通信会社様のポイントサイトリニューアルのための目標やターゲットの設定を行っています。
定性調査は前職を含めると過去10プロジェクトほどで実施をしており、その多くがインタビュー調査で、調査設計から実査、分析までの全体を担当しました。調査対象は、ブランドのファンやエシカルな暮らしを実践するイノベーター、医療従事者、金融商品に関心のある方、大学の研究者や産学連携の担当者など、幅広いテーマで行ってまいりました。」
・福澤 るり(以下F)
「私は直近で、英語でのワークショップファシリテーションやユーザー調査、サイトリニューアルのためのリサーチや改善施策出しなどを実施しました。
定性調査は、前職も含めると累計300人ほどに実施した経験があります。電通デジタルに入社してからは、外部モニターへのインタビューと社内インタビューを合わせて50名ほど実施しました。」
ーフォーカスグループインタビューの実施経験はありますか?また、フォーカスグループインタビューに対して抱いている印象を教えてください。
・F
「自身で実施した経験はありませんが、他の方が行っている様子を見たことはあります。
プロジェクトの初期段階などユーザーや商品 / サービスに関する手掛かりがほとんどないような状況で、ペルソナをクイックに作成する際などは、グループでのディスカッションで見えてくる様々な要素が役に立つのではないかという印象を持っています。
一方で、プロジェクトが進み仮説がある程度出来上がっているような状況では、バイアスが掛かりすぎてしまうため、あまり向いていないと感じます。」

・S
「私も福澤さんと同様、他の方が行っている様子を見たことがあるのみですが、短期間でグループの方々の情報を知ることができるのは大きなメリットだと思います。
また、自身の知見がない分野で行うことで、参加者同士の盛り上がりなどから、自力では得ることが難しい情報を手に入れられる可能性があると感じています。
ただ、グループでの会話は話が発散しがちなので、ファシリテーションが難しかったり、求めている情報が得られにくい場合もあったりするのがデメリットだと思います。」
ー続いて、お二人が普段どのようにAIを利用されているか教えていただけますか?
・F
「最も多いのは、ChatGPTを用いた他社事例のデスクリサーチです。条件を設定しそれに当てはまる事例を探してもらい、さらにその事例の詳細を調べたり、類似する別の事例を探したりするのに利用しています。
他には、Excelの関数を調べる際にも利用します。例えば、”〇〇の条件で△△の計算をするにはどうすれば良いか?”と ChatGPTに聞くと、最適な関数を教えてくれます。このように自身が利用したい条件に当てはまる関数などは、普通の検索では探しにくいですが、AIを活用することで簡単に知ることができています。
また、現在参加しているゲームを作るプロジェクトでは、 AIに内容や雰囲気、文字数などを伝えることで、ゲーム内で表示される説明文やセリフの文言を考えてもらい、実際に表示する文章を考える際の土台として活用しています。」
・S
「福澤さんのExcelの関数を聞くのと似ているのですが、私はChatGPTに Pythonのコードを書いてもらうことが多いです。業務でRawDetaの加工を行ってデータ分析などをする際に、”〇〇のライブラリを使って△△な加工がしたい”などと聞くと、コードをすべて書いてくれるため、非常に便利です。
他には、カスタマージャーニーマップを作成する際に利用します。 ChatGPTに一から書いてもらうと、指示を与える側である私も労力を要するため、既にあるペルソナの情報をインプットしたり、カスタマージャーニーマップの型を指示したりすることで、短時間かつ少ない労力で作成することができます。」
ー業務以外のシーンで、AIを活用することはありますか?
・S
「ChatGPTに大学教授になりきってもらい、旅行で訪れた場所で感じたことを伝え、それに対し専門家の視点でコメントを返してもらうという使い方をしたことがあります。
”こういうところにも着目してみましょう”など、行く先々で注目すべきポイントを教えてくれたので、より深く楽しむことができました。」

3.AIを用いたフォーカスグループインタビューについて感じたこと / 考えたこと
ここからは、今回実施したAIでのフォーカスグループインタビューの手順と結果(※前編を参照)を振り返りながら、お二人が感じたことや考えたことをお伺いします。
ーまず全体を通しての第一印象はいかがでしたか?
・F
「はじめはAIでインタビューを行う際のアウトプットのイメージが湧きませんでしたが、実際に結果を見てみると文字ベースでやり取りが進行していくため、リアルの人間を相手にインタビューを実施するのと比べ、ファシリテーションがしやすそうだと感じました。
また、AIを用いたインタビューで今回のような結果を得るためには、ペルソナの条件など、細かな設定を事前にする必要があるのだなと感じました。」
・S
「今回のインタビュー結果を見る前までは、私も福澤さんと同様、アウトプットのイメージができていませんでした。実施の方法に関しても、細かな設定をせずにラフに行うのかと思っていましたが、今回の結果を見てかなり詳細に設定を行っていることが意外でした。
そのため、AIを用いたインタビューの利用イメージとしては、実際の調査を行う前のシミュレーションとして被験者からの反応を予測することで、深堀りすべきポイントを見出すために活用できると感じました。
さらに、得られた回答をマインドマップを作成してくれる別のAIにインポートすることで、被験者の回答範囲を予測し、それを元に再度調査設計を見直すという使い方もできそうだと感じました。」
ーそれではここから、実施したインタビューの詳細についてお伺いいたします。
まずはインタビューの実施のプロセスについてです。ペルソナの設定からインタビューの実施までの一連のプロセスについてどう思われましたか?
・F
「プロセスに関しては、初めて実施する際には細かな設定や調整が必要なため負担が大きいと感じる一方、回数を重ねるうちにノウハウが積み重なっていくことで、最終的には少ない負担で実施できるようになりそうだと感じました。
懸念点があるとすれば、AIが生成したペルソナの精度です。従来の人力でのペルソナ作成は、定量 / 定性の様々なデータを用いて根拠を持って作成するのに対し、AIが生成したペルソナはその根拠が見えないため、どれくらい信頼できる精度なのかは気になるポイントです。
今回テーマとして取り上げたランニングアプリは、比較的シンプルなテーマなため大きな懸念はありませんでしたが、より複雑な商品やサービスの検討をする際には、AIだけに頼ってしまうのは不安だと感じます。」
・S
「初めて実施する際の設定や調整は私も大変そうだと感じました。特に、実際に自力でペルソナを作成したり、対人のインタビューを実施したりしたことがない方にとっては、このプロセスは難易度が高そうだと感じます。
ペルソナの精度についても福澤さんと同じ意見で、自身がAIを使ってペルソナを作成するのであれば、属性データや購買データをもとに作成するよう、しっかり根拠のインプットを行いたいと思います。
また、今回の例では被験者を複数人設定して実施をしていますが、他の活用方法として、インビューを聞く側の役割を増やしてみても面白いと感じました。例えば、UXデザイナーに加え、UIデザイナーやエンジニア、さらにはクライアントを設定してみても面白いのではないでしょうか。
さらに、クライアントも1人だけではなく、”決済権を持つ人物”や”チームリーダー”、”現場担当者”など、複数の役割を設定することで、様々なステークホルダーからの意見が予測できるため、その後の議論に活用できると感じました。」
ー続いて、インタビューの内容について感じたことや気になったことを教えてください。
・F
「被験者の回答の中に分析的な発言が多く含まれていたため、インタビュー結果をまとめるときに役に立ちそうだと感じました。
今回は複数人のグループインタビューなので、複数人で会話が展開されていましたが、それぞれの発言がお互いの考えにどれほど影響していたのかが気になりました。
リアルのグループインタビューでは、良くも悪くも参加者の発言がお互いに影響し合いますが、AIのグループインタビューではそのような状況は起こっていたのでしょうか?」
ー鋭いご指摘をいただきありがとうございます。
今回はまさにそのような、参加者同士が影響し合う状態をインタビューの中で作り出せればと考えていました。
具体的には、”他の人の発言に割り込んだり、便乗したりしてもOK”などの指示を与えることで、参加者同士の議論を活性化しようと試みました。
しかしながら、話し合いは発生するものの、結果的にどの被験者も事前に設定した価値観に準拠した発言に終始してしまい、インタビューの中での価値観の変化や新たな気づき / 発見は起こりませんでした。
そのため、参加者同士が影響し合う状態を作り出すことは、今後の改善点だと考えています。
▼入力したプロンプト
#今回のフォーカスグループインタビューでは以下のルールを守ってください
・発言する順番に決まりはありません。言いたい意見がある被験者ごとに自由に発言してください。
・ただし私が誰かに質問をした場合は、その人から最初に発言してください。
・被験者の中で主張したい意見があれば、他の人の意見に横から便乗したり勝手に割り込んで発言することもOKです。
・お互いにただ肯定し合う意見ばかりにならないようにしてください。ネガティブな否定意見や一部分だけ強く肯定する意見など、被験者の本質的なニーズや本音が引き出されるような議論をしてください。
・S
「アウトプットが文字情報というのも一因だと思いますが、被験者の回答が総じてフラットで、感情が動くポイントがあまり感じられないため、被験者が強く感じている点や共感している部分が見えづらいと感じました。
また、ペルソナ作成時にインプットした情報が限定的なため、エピソードに深みがないようにも感じました。リアルの人間相手のインタビューでは、例えば、”病気を患ったことをきっかけに運動の良さを再認識し、ランニングが習慣化した”というような、事前のヒアリングでは把握できなかったような情報を得られることがあります。
対して、AIの回答は事前にインプットした情報の枠を越えられず、新たな情報が得にくいという印象を受けました。」
ー発言の濃淡に関しては、「話したいことがあるときは沢山話してOもK。逆に興味がない内容に対しては発言しなくてもOK」など、被験者の発言量によって濃淡を浮かび上がらせようと試みましたが、結果的に発言量にあまり差異は見られませんでした。
興味関心のあるなしに応じて、被験者の回答に濃淡をつけることも、今後の課題と考えています。
▼入力したプロンプト
#今回のフォーカスグループインタビューでは以下のルールを守ってください
・被験者の発言量は、被験者の中で言いたい意見があるときは多く、あまり意見が思いつかない時は少なくなるように変化をつけてください。
・被験者の中で意見を思いつかない時は、正直に「特に意見が思いつかなかった」と言ってもOKです。
・S
「一方、回答で得られる情報の細かさは想像以上でした。
例えば、ランニングをする前の準備に関する質問に対しての回答などは、細部まで語られておりイメージしやすかったです。そこから更に”ランニング中はどんな景色を見ていますか?”や”景色の写真は撮りますか?”など、深掘りの質問ができそうだと感じました。」

ーインタビュー結果を一通りご覧いただいたうえで、ご自身ならどのように活用できそうだと感じましたか?
・F
「AIの回答をインプットとして活用するのではなく、リアルの人間に対するインタビューを行う際に、被験者が回答にしくいと考えられる設問を検討する場面で、どのような聞き方をすれば被験者が回答しやすくなるのかを探るための良い壁打ち相手になってくれそうだと思います。
AIは言語化能力に長けているため、AIですら回答が難しい設問は、実際の被験者にとってはなおさら難しいはずです。このように調査設計段階における練習相手には大いに活用できるのではないでしょうか。」
・S
「私は今回のインタビュー結果を、一般ユーザーの基本的な意見が出揃ったパターンとして捉え、さらにもう一度別のパターンのインタビューを実施してみたいと思います。例えば、エクストリームユーザー同士のグループインタビューを追加で実施することで、一般ユーザー同士のインタビューからは得られなかった情報を得ることができそうです。
また、ランニングアプリを全く使わないユーザーや、過去に使っていたけれどやめてしまった人に対して実施をすると、現役ユーザーからは得られないバッドポイントが得られるのではないかと感じています。」
ー実際のプロジェクトで活用する場合、どのステップに取り入れると有効だと感じますか?
・F
「プロジェクトの初期段階で、ユーザー像やプロダクト / サービスの使われ方があまり見えていない場合に、それらをまずある程度把握するシーンで有効だと感じました。
また、リアルの人間に対してユーザー調査を行う前に、AIでテスト的にユーザー調査を実施することで、実際の調査の準備として利用できると思いました。」
・S
「福澤さんの利用方法とは逆のアプローチで、リアルの人間へのインタビューから得られた結果を、AIペルソナの基本情報としてインプットし、それをもとに再度AIを用いてインタビューを行うことで、リアルのインタビューから得られた回答が確からしいのかを確認するためにも利用できると思いました。」
ー実際のインタビューの前後どちらでも面白い活用方法がありそうですね。
続けて、今回のインタビュー結果を見て、驚いた点や新たな発見があれば教えてください。
・S
「実際のフォーカスグループインタビューに近そうな回答が得られた点です。設問によっては短文で返答される場合もあるかなと思っていましたが、今回のインタビュー結果を見ると、情報量と内容の妥当性がある程度担保されており驚きました。
上記で述べた良かった点なども踏まえると、調査の設計と検証の場面で活用できると感じました。得られた回答をそのまま活用するには精度がまだ不十分ですが、実際にインタビューを行うにあたり、事前に回答の幅を把握したり、得られた回答の確からしさを検証したり、他に可能性がないかを探るためには十分活用できると感じます。
また、新規事業などでお金を掛けずにモックアップなどを作成する際には、その足がかりとして利用できそうだとも思いました。」
・F
「私は自我を持った回答が得られたことが驚きでした。AIに対しては、良くも悪くもフラットな印象を持っていたので、得られる回答も当たり障りのないものだろうと思っており、その側面も多分にありはしましたが、予想よりはインタビューの再現性が高かったです。」
ーAIを用いたインタビューを実施する際に必要な準備時間や手間を踏まえると、現時点のAIの回答精度でも利用する価値はあると思いますか?
・F
「AIを用いたインタビューは、リアルの人間に対してインタビューを実施するよりは、少ない工数で実施することができます。そのため、現時点の精度でも調査設計や初期仮説を考える際には十分に役立つと思います。
リアルの人間に対してのインタビューでは、被験者を収集したり、日程を調整したりするのに最も時間が掛かり苦労することが多いです。
その点、AIを用いたインタビューであれば、そのコストが全く掛からないため、非常に便利だと思います。」
・S
「クライアントへ提示できるレベルでインタビュー結果が活用できるかと言えば、難しいと思います。
現時点では、ただChatGPT上でペルソナを設定しインタビューを実施しただけでは、精度の高いアウトプットは得られません。やはりある程度の精度を得るためには、事前にいかに信頼性の高いデータをAIにインプットするかが重要だと考えています。
一方、設計したインタビューガイドなどに、聞きたいことの抜け漏れがないかを確かめるなど、内部での業務に活用するには有効だと感じます。」
4.今後のAI活用とリサーチャーの存在価値
ーこれまでの話をまとめると、AIは現時点でも部分的に業務に役立てられる反面、まだまだ精度が劣る部分もあるなど、依然として人間の判断や調整を必要とするところが多くあり、我々リサーチャーの存在意義は大きいのではと思っております。
そこでお二人が考える、AIに負けない / 代替され得ないスキルや役割について教えて下さい。
・F
「現状のAIの弱点は、与えられた条件をはみ出せないところだと考えています。”被験者がどうしてそのような回答をしたのか?”や”そのような価値観に至ったのはなぜか?”を、より広い視野で捉え導き出すことができるのかが、リサーチャーの強みだと考えています。
今後AIがどのように進化していくかはわかりませんが、1人のリアルな人間に対してインタビューをする際に、その人が求めているものや考えていることを、対象のプロダクト / サービスを限定することなく深堀りできることが、人間が得意とするところだと自負しています。
AIが特定の条件に基づいて出した回答を、あくまでベースとして活用しながら、さらにそこに奥行きのある情報を加えたり、深い解釈を与えたりできるのが、AIに負けない / 代替され得ない人間の強みなのではないでしょうか。」

・S
「以前あるプロジェクトのメンバーと、”月1回くらいの頻度で会う、程よい距離感で身近な話をできる人”がどういう人かを話し合ったことがあります。結果として、美容師さんがその条件に当てはまる役割だという結論に至りました。
このように、ふわっとした条件から誰もが共感できるワードを導き出すことができる能力は、人間特有だと考えています。
AIも条件を細く設定すれば、ロジカルに同様のワードを導くことができるかもしれませんが、ロジカルではないけれども、人が共感できるグルーピングや構造感を設定できるという能力は、AIに代替できない能力だと思います。
また、一見すると繋がりがあるとはわからない関連事項を参照する能力もまた、人間にしかできない強みだと感じます。」
ー確かに、一見すると繋がっていなさそうだけど、繋がっていないとは言い切れないような、物事同士の緩やかな繋がりを見出し、皆が確かにそうだよねと共感できるようなアイデアやグルーピングを思いつくなど、飛躍しすぎない飛躍、共通項を見出すことができるという能力は、私もまだまだAIに代替されない人間の強みであると感じました。
ー次に、リサーチをはじめとするUX関連の業務において、社内でのAIツールの活用が進んでいきそうか、お二人の所感を教えてください。
・F
「現在担当している観光系の案件では、すでにクリエイティブ系のメンバーが画像生成などで積極的にAIを活用していますし、自身も事例探しなどで積極的にAIを活用しています。
また、現在時間を掛けて調査の設計や分析をAIに行ってもらうためのベースとなるプロンプトの開発を行っています。そのベースができれば、複数のプロジェクトにも応用ができるため、AIの利用はこれから更に進んでいくのではないでしょうか。」
・S
「私の前職は事業会社で様々な業務を社外へ依頼する立場だったため、社内で担う業務の範囲が狭かったのですが、電通デジタルに入社して、1人がカバーする業務の範囲やスキルが多岐に広がりました。
そこで一人ひとりのUXリサーチャーやコンサルタントが、自身の中で特定のコアスキルは持ちつつも、 AIの手を借りながらリサーチやコピーライティング、画面設計など複数のスキルの幅を広げていくことの意義は大きいと感じています。」
ーそれでは最後に、今後の業務にAIを取り入れることで期待することを教えて下さい。
・F
「先程の話と関連しますが、例えば新卒の方などインタビュー未経験の方は、そもそも被験者への質問の仕方すらわからない状態です。そういった方々のために、どうやったら良い質問ができるかなどを練習してもらうための使い方ができると良いと思います。
自身がそういった方々のためにインタビューの練習台として被験者役をやった際には、あえて言語化が苦手な方を演じたりしました。リアルな人間相手のインタビューでも、様々なタイプの人がいるので、それぞれに適応できるようにするために、時間と工数を掛けずに試行錯誤しながらトレーニングをする場としてAIは活用できそうだと考えています。」
・S
「AIはある程度クオリティが担保されたアウトプットを一律に出すことができるため、それを土台としながら、人間が付け足しを行うことで、スキルの型化や汎用化に活用できると考えています。
また、自身が作成しているアウトプットに対して、客観的な判断をしてくれる役割を期待することができます。他の人はどうしているかや、業界全体で考えた時に自身のアウトプットは何点かなど、客観的な判断をAIがしてくれることで、自身のアウトプットや見えている範囲を、客観的に把握することができます。この客観的な評価を元に、アウトプットをより良いものへとブラッシュアップしていけるのではないかと考えています。」
5.インタビューを終えてのまとめ
今回のAI同士のグループインタビューからは、AIは現時点でもUX業務の様々な場面で便利に活用できそうだとの結果が得ることができました。
一方で、その精度やAIが捉えられる範囲についてはまだまだ限定的で、実際のプロジェクトで活用するためには、リサーチャーなど人間の判断や解釈を要するということも明らかになりました。
AIが日々目覚ましく進歩を遂げる一方で、それを使いこなす我々人間のAIリテラシーやもまた、日に日に重要度を増してきています。その中で我々は、AIにその役割を代替されるのではなく、むしろAIを効率的かつ効果的に活用することで、その相乗効果として得られる深い洞察や新たな発見を元に、より良いUXの実現へ向けて尽力していかなければなりません。
今後のAIの発展に大いに期待をしながら、我々もまたAIを使いこなせるUXのスペシャリストとして、これからもAIのさらなる有効な活用方法を模索してまいります。

夏秋湧成
エクスペリエンス&プロダクト部門
マーケティングのコンサルティング企業にてリサーチャー/アナリストを経験したのち、2023年に電通デジタルに入社。UXデザイナーとして新規サービスの戦略策定からシステム開発まで幅広く担当。
※所属は記事公開当時のものです。

堀田裕介
エクスペリエンス&プロダクト部門
2020年に電通デジタル入社後、銀行や製薬会社のサイトのリニューアルなど、情報設計を中心としたUIUX業務に携わる。調査の設計・実施や、施策立案などの案件にも携わり、 UIUXデザインおよびコンサルティングに関わる業務の幅を広げている。
※所属は記事公開当時のものです。
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