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2024.04.12

最新店舗の視察を通して見えてきた、”単なる売場”を超えた店舗体験の可能性 ~前編~

#UXデザイン#コラム#ナレッジ・ノウハウ

楠本悠太 楠本悠太
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株式会社電通デジタルでは、リテール業界の最新の店舗体験を把握するため、定期的な店舗視察を実施しています。
当記事では、視察を通じて得られた、店舗における体験価値創造のヒントを前編・後編にわたって紹介します。

なぜ、いま店舗体験をあらためて考える必要があるのか

2023年5月にCOVID-19が「第5類」へと移行したことで、コロナ禍のピーク時と比べると徐々に小売店や外食店、商業施設などの利用者数が増加してきました。

一方で、コロナ禍での自粛生活を通じ、EC利用者が拡大し、”オンラインの方が安く、楽に自宅まで届けて貰える”と考える人も増えてきたのではないでしょうか。

こういった背景から、「立地と品揃えに優れているため、短時間で効率的に買い物ができる」だけでは、わざわざリアル店舗を訪れようとは思わない場面もあるでしょう。
そのため、これからのリアル店舗では、”買い物における効率の追求”以外の提供価値を考えていく必要性が高くなっていると、我々は考えます。

今回は、我々が実際に視察した3つの店舗事例をもとに、リアル店舗ならではの強みを活かした体験価値創造のヒントを示していきます。

まだ知らない商品に出会い、実際に触れながら商品のストーリーを知る
~明日見世(大丸松坂屋百貨店)~

「まだ知らない(検索するに至らない)商品との出会いを提供できること」や「実物の商品を手に取って眺めることができる」強みを活かした店舗体験を実現している事例として、ショールーミング型店舗があげられます。

本章では、大丸松坂屋百貨店の「明日見世」について紹介します。

明日見世の全体像
明日見世全体像(2023年4月撮影)

ショールーミング型店舗とは、別名「売らない店舗」とも呼ばれる形態であり、実店舗で様々なブランドの商品情報を確認してから、気に入ったものがあればECなどで商品を購入することが前提になっています。

この定義だけを見るとデメリットの方が大きいようにも見えますが、勿論そうではありません。
明日見世では下記のような工夫がなされており、商品と出会い、深く知るまでの流れがスムーズに設計されています。

・多岐にわたるブランドが広く目に入る陳列
・3か月単位で商品の入れ替えが行われ、次回は全く別のD2Cブランドを目にする
・POPや「アンバサダー」と呼ばれるスタッフによる第三者目線での紹介により、サイトでは知りえないブランドストーリーを知ることができる
・QRコードを読み取るとスマホで詳細情報を知れ、SNSフォローで来店以降も情報を受け取れる

明日見世の陳列棚のズーム画像
明日見世陳列棚(2023年4月撮影)
明日見世の商品紹介POPのズーム画像

明日見世 POP(2023年4月撮影)

このように、店舗ならではの強みとオンラインの強みを掛け合わせ、”今まで知らなかったブランドと出会う”および”知らなかったブランドでも興味を持つ”までの流れが設計されています。

また、一度興味を持ったユーザとはオンライン上で接点を持ち続けられるため、たとえその場での購入が発生しなくても、長期的にはオンライン上での売上に繋げることができます。(2023年4月時点)

”デジタル×人”でのハイブリッド接客により、自分に合った商品とその使い方が分かる
~SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE~

化粧品業界において、デジタルツールを用いた体験(肌測定など)は、最早珍しくなくなっています。
しかし、デジタルツール”のみ”を用いた体験には、”その結果になった理由が分からいない”、”結果には反映されなかった、自身の肌悩みを相談できない”といったデメリットが挙げられます。

「店舗スタッフが、顧客の悩みに寄り添ったコミュニケーションを取れること」を活かした事例として、銀座にある資生堂のグローバルプレステージブランド「SHISEIDO」の旗艦店、「 SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」を紹介します。

この店舗の優れているポイントは、人(美容部員)とデジタルのそれぞれの強みを活かして、互いを補完しあったコミュニケーションを実現していることです。

店頭で行える肌診断の様子
Beauty Alive Circulation Check※の様子

※ 非接触で肌内部の美のめぐりを測定できる商品体験
引用元:https://brand.shiseido.co.jp/news-beautyalivecirculationcheck.html

Beauty Active Circulation Check診断結果の画面イメージ

Beauty Active Circulation Check診断結果

具体的には、以下の点でデジタル×人による体験価値の向上が行われています。

・デジタルを通じた、お客様自身が言語化できていない肌悩みの数値/可視化
・デジタルの定量データと経験/知識を持つ美容部員の定性データによる最適な提案
・スタッフによる、お客様に合った商品の使用方法/メイクレッスンなどの提案(パーソナライズ)

デジタルと人が補完し合うことで、デジタルの得意な(肌状態などの)可視化を活かしつつ、プラスαで顧客が抱えている悩みに寄り添った、複合的な提案・使用方法のレクチャーなどを実現することができます。
このような体験は、店舗だからこそ提供できる価値なのではないでしょうか。

商品を買った後の素敵な生活を”五感で”記憶できる
~Galaxy Harajuku~

「店舗の空間全体を使った表現、購買体験の設計ができること」を活かした事例として、Galaxy Harajuku(東京・原宿に誕生したGalaxyブランドのショーケース)を紹介します。

地上6F・地下1Fの全7フロアで構成されるGalaxy世界最大級の規模を誇る当施設では、新製品のタッチ&トライなど、Galaxyブランドの世界観を一度に体験することが可能になっています。

Galaxy Harajuku 店舗外観

Galaxy Harajuku 店舗外観※

引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000286.000030942.html
※現在の外観と異なる場合がございます。

1階では、Galaxyの最新機種を楽しく体験できるコンテンツが用意されています。撮った写真は自分のスマホに転送することが可能で、Galaxyの高画質度合いをあらためて実感する機会になります。

撮った写真は自分のスマホに転送することが可能で、Galaxyの高画質度合いをあらためて実感する機会になります。

Galaxy Harajuku 館内の展示ディスプレイを撮影した画像

Galaxy Harajuku 館内での撮影画像

また、チームラボとのコラボで実現した”捕まえて集める恐竜の森”は、今までにない未来的な体験を行える空間になっています。

チームラボ《捕まえて集める恐竜の森》の展示イメージ

チームラボ《捕まえて集める恐竜の森》2023, Interactive Digital installation, Sound: Hideaki Takahashi © teamLab, courtesy Pace Gallery

引用元:https://www.samsung.com/jp/explore/galaxy-harajuku/

来場者は、貸出されるGalaxyのスマートフォンを使い、空間内に出現する恐竜を捕まえ、コレクション図鑑を作成することが可能です。

チームラボ《捕まえて集める恐竜の森》の展示イメージ

チームラボ《捕まえて集める恐竜の森》体験の様子(2023年7月撮影)

他にも、Galaxy Harajukuの各階には様々な体験型コンテンツが用意されており、館全体での体験を通じてブランドの良さを知っていただけるような設計がなされています。

これらの体験のポイントは、空間全体を使った表現が”五感に強く響き、記憶に残りやすい”という点と、”その記憶に残りやすい体験のなかに、自然と商品を使用し、良さに触れる機会”が溶け込んでいることであると考えます。

非日常的なコンテンツを楽しんでいたら、いつの間にか最新商品に触れることとなり、欲しいという感情が記憶に残る。この体験の中では、最新技術は単なる集客手段にとどまらず、購買意向の醸成まで繋げられる価値を提供しているのではないでしょうか。

おわりに

このように、単に”物を買う場所”を超えた店舗体験が日々実現されています。
後編でも、引き続き最新の店舗体験について紹介します。

楠本悠太

楠本悠太

トランスフォーメーション部門

2020年、電通デジタルに入社。UXコンサルタントとして従事。定性/定量調査をクイックに行いながら、toC向け新規サービス開発や、業務アプリケーションのUX改善などを担当。 

※所属は記事公開当時のものです。

山崎莉子

山崎莉子

トランスフォーメーション部門

2022年、電通デジタルに入社。UI/UXデザイナーとして従事。 定量・定性の両視点から課題を捉え、サイト改善や新規コンテンツ提案、従業員の顧客視点醸成支援などに携わる。

※所属は記事公開当時のものです。

福澤るり

福澤るり

トランスフォーメーション部門https://xp-plus.jp/wp-admin/theme-editor.php?file=style.css&theme=xp-plus

UXコンサルタントを経て2022年、電通デジタルに入社。定性調査を行いながら、幅広い業界でサイト・アプリ改善や新規サービス開発などに携わる。

※所属は記事公開当時のものです。

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