2022.05.24
これからのUXに求められる「ソーシャルグッド」~ Google UXデザイン プロフェッショナル認定取得者に聞く~
UXのスキルを高める手段の一つに、「Google UXデザイン プロフェッショナル認定」があります。
Google UXデザイン プロフェッショナル認定とは、オンライン上で7つのコースの講義を受けて、課題に取り組みながらUXについて体系的に学ぶことのできる講座です。
これまでUXのスキルは実務経験によって磨かれるものというイメージがあったかと思いますが、Google UXデザイン プロフェッショナル認定での体系的・理論的な学びを通してどのようなスキルや考え方を身に着けることができるのでしょうか。
Google UXデザイン プロフェッショナル認定を取得した社内のUXデザイナー2人に聞いてみました。
入社前のUX経験
馬さん(以下M)
「学生時代は美術系の大学でコミュニケーションデザインを学んでいました。インターンではSEOやアプリのプロダクトデザインも経験しました。
当時はUXという言葉そのものは知りませんでしたが、しっかりユーザーのことを考えながらサービスを作りたいと思い、電通デジタルに入社しました。」
鈴木さん(以下S)
「大学では、ゼミの活動の一環でユーザーの心理を考えた企業のプロモーション設計を行っており、その中でWebサイトの設計も行っていました。
それらを通して、デジタルを使って人の心を動かしたい、幸せにしたい…ひいては社会全体を良くしたいと考え、電通デジタルに入社しました。
私もUXそのものに関する知見はありませんでしたが、ペルソナ設計などは行っていたのでUXに近いことは行っていました。」
マクロとミクロ。それぞれの課題感
電通デジタルに入社してから、2人は正反対の方向の業務を経験します。
その中でそれぞれ課題感を感じ、Google UXデザイン プロフェッショナル認定の受講に至りました。
「普段の業務では新規事業のサービスデザインやストーリーの策定などを行っています。他にも、アプリの情報設計やビジュアルデザインまで幅広く担当しています。
配属当初から、サービスのコンセプト設計などマクロな業務を経験することが多かったです。
しかし、自身のUX経験が浅いため上流から入った際に何を根拠として構想すべきか悩んでいました。
また、トレーナーと話している中でUXのフローに対する理解不足に気づき、正しいフローを知りたい、実践したいと思うようになりました。
そんな時にネットでこのような講座があるという情報を知り、受けてみることにしました。」(M)
「私は馬さんとは反対に、UXデザインのなかの部分的な業務からキャリアをスタートしました。具体的にはサイトの情報設計やCJM(カスタマージャーニーマップ)作成などを担当することが多かったです。
3年目以降は、ワークショップのファシリテーターやユーザー調査の設計やモデレーターなど、幅広くUX業務に携われるようになってきました。
そんな中で、体系的にUXデザインを理解して活躍の幅を広げたいと思い、上司に相談したところ、この講座を薦められ、受けることになりました。」(S)
アウトプット起点の進め方
Google UXデザイン プロフェッショナル認定講座は、全部で7コースあり、自分のペースで受講を進めることができます。短期集中/長期でコツコツ とそれぞれのやり方で受講を進めた二人に具体的な進め方を聞いてみました。
「私は半年程度かけて受講を完了しました。講義の中でスケジュールが設定されていたので、それに沿って受けました。
序盤は講義やテストが中心でしたが、後半は自分で課題を制作して提出する必要があったのでハードルは高かったです。
序盤は講義を受けてから課題に取り組んでいましたが、終盤では課題と並行して講義を受けていました。」(M)
「私は短期集中で取り組みました。毎週土日3時間程度を勉強時間にあてて、3か月程度でまとめてインプット・アウトプットを繰り返しました。
私も馬さんと同様に、先に課題の内容をチェックした上でインプットすべき内容を逆算し、講義を受けていました。」(S)
2人は、日々の業務でもアウトプットを起点としてインプットを行っているといいます。
「講義以外でUXデザインスキルを磨いていくうえでも、「インプット」と「アウトプット」のバランスを大切にしています。
日々の実務が「アウトプット」だとすると、実務の中でうまく資料をまとめられなかったり、表現できなかったりと知識の不足を感じた際は、書籍やUXデザイン関連のnote・記事で適宜業務に必要なものを「インプット」し実践で生かすようにしています。 この「インプット」と「アウトプット」のサイクルのスピード感と「自分の知識の不足を感知する感覚」が重要だと考えています。」(S)
「私もアウトプットを起点として、実践の際に分からないことを都度インプットすることで、より知識を身に着けられると考えています。 成果物について相手に伝える際に、これまでインプットした理論などを活用しています。」(M)
Google流「ソーシャルグッドなUX」とは
Google UXデザイン プロフェッショナル認定講座は全世界の人に開かれています。受講を進める中で、2人はUXの観点での多様性やソーシャルグッドなどへの気づきを深めていったそうです。
「同じ課題を提出した他のグローバルな受講者たちと課題を相互評価する仕組みがあるのですが、普段はグローバルな環境でUXに携わる人たちのアウトプットを見る機会がないので、とても良い経験になりました。同じ課題をやっていても国や文化、思想が異なるとこんなに多様性が生まれるのかと驚きました。
少し手を抜いて提出した課題には、英語で”もう一度出直してこい”のような厳しいコメントをつけられたこともありました(笑)」(S)
「講座の中ではインクルーシブ・多様性・宗教観点での説明もあり、日本でUXをしているときには考えないような視点が得られました。
講座の中で印象的だったものの一つは、自分の人種的な偏見をチェックするテストです。Googleが考えるグローバル視点のUXを学ぶことができました。
また、最後の課題は”ソーシャルグッドのためのUXアプリデザイン”でした。講座や課題を通して、今まで以上にそういった点に目を向けられるようになりました。」 (S)
「私も、講座を通してインクルーシブ・ダイバーシティなどへの意識が高まりました。
世界的にダイバーシティを意識する傾向にあり、例えばGoogleでもサイト内のイラストに身体的不自由の人などが描かれています。
一方で日本のUXはまだ多様性の反映が遅れているのではと気づきました。
例えばサイト内のキャラクターの性別についてです。北京オリンピックのキャラクターには性別が設定されていません。
日本のサイトではチャットボットのキャラクターは女性である場合が多いかと思いますが、そのようなイラスト一つとっても「接客=女性」のようなジェンダーの固定化につながるので、伝える側としては気を付けていかないとなと思うようになりました。」(M)
「身の周りでも持続可能性やウェルビーイングが根幹になっている事業は増えてきていると感じています。戦略としてのSDGsだけでなく、実際のユーザー体験にまで落とし込んで行ければいいなと考えています。」(S)
これから目指していきたい方向
Google UXデザイン プロフェッショナル認定講座でグローバルなUXの視点を身に着けた2人。今後どのようにUXデザインのさらなるスキルアップを目指していくのでしょうか。
「講座を受けて以来、制作業務の際にGoogleの手法を用いるようになりました。 Googleはストーリーボードとワイヤーフレームにおいて、大まかな要素の配置を確認するための”low-fi”、要素の具体的なサイズやテキストなどを詳しく定義する”hi-fi”といった二段階のステップを踏んで作成していきます。
今までは1段階でいきなり細かい粒度のものを作り始めていましたが、Googleの手法にのっとって2段階構成で作るようにすることで、クライアントとの合意形成がよりスムーズに進むようになりました。
このように、まずは学んだことを業務で生かしていきたいなと思っています。」(M)
「また、全編英語のGoogle UXデザイン プロフェッショナル認定講座を受けたことで英語で専門分野を学習することへの苦手意識が減ったので、今後はほかの英語のデジタルスクールにもチャレンジしていきたいなと思っています。」(M)
「私は全体の戦略に関する学びをさらに深めていきたいと思っています。
他にも、Google UXデザイン プロフェッショナル認定講座の社内勉強会を開催したいと思っています。
講座を受ける中で、課題や講義の内容に関して周りの人と意見交換をしてみたいと感じたので、社内でGoogle UXデザイン プロフェッショナル認定講座を受ける人たちのコミュニティを運営していきたいと思っています。
また、ウェルビーイング・ソーシャルグッドに対する感度が高い人たちが集まることで、社としてもさらに面白い挑戦ができるのではないかと思っています。」(S)
参考URL
グーグルUXデザイン プロフェッショナル認定証 | Coursera
https://ja.coursera.org/professional-certificates/google-ux-design
Takeshi Suzuki | UX Designer
https://tksszkux.wordpress.com/
濱藤柚香子
プロジェクトマネジメント事業部
2020年に電通デジタルに入社。ユーザー起点でのサイトディレクションやユーザーテスト、アンケート設計・分析業務、ワークショップ設計・運営業務など幅広い支援業務に従事。
※所属は記事公開当時のものです。
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