2021.09.24
Z世代にフィットする店舗体験とは~現役Z世代が注目する店舗事例~
近年マーケティング業界では、消費に大きな影響を及ぼす存在として「Z世代」に注目が集まっています。
Z世代とは、1996年~2015年頃までに生まれた若年層を指す言葉であり、幼い頃からインターネットやデジタルに触れてきたことから、これまでの「若者」とは少し違った新しい価値観を持つことも特徴として挙げられています。
1997年生まれの私も、高校生のころからiPhoneを持ち、インターネット上で提供されるさまざまなコンテンツに親しんできたZ世代です。
一般的にZ世代は、「マス的なコンテンツよりも自分にパーソナライズされたものを好む」「エシカルに対する興味が高い」「固定観念にとらわれず、多様性を重視する」「モノよりも経験・体験にお金を使う」などの価値観を持っていると言われています。
私自身もこのような価値観におおむね同意であり、典型的なZ世代であると自負しています。
顧客体験を考える上でも、Z世代の影響を考慮することは不可欠です。では、Z世代はどのような体験に魅力を感じているのでしょうか。
本記事では、顧客体験の中でも「店舗での体験」にフォーカスし、現役Z世代の目線から魅力を感じた体験とその特徴を紹介していきます。
Z世代が注目する店舗
SHIRO SELF(東京・新宿)
こだわりの自然素材を使用するコスメティックブランドSHIROは、2020年3月に通常店舗に併設する形で新業態のデジタルストア「SHIRO SELF」をオープンしました。
この店舗では、専用のサイト上で製品説明・購入確定を行うことで、店員による接客を減らしています。
私も先日実際にこの店舗を訪れ、買い物をしました。
まず、店頭に掲出されているQRコードを来店客のデバイスで読み取って専用のサイトに移動します。会員登録・ログインは不要なので、スムーズに買い物を開始できます。
店頭に置いてある製品のQRコードを読み取ると、Webサイトに製品説明が表示されます。製品説明の下部のボタンで注文を確定したあと、有人のレジカウンターで製品を受け取り、会計を行って完了です。
オンラインショップのような手軽さがありながら、実際に製品を試すこともできたので納得して購入することができたため、非常に満足できました。
では、このSHIRO SELFは具体的にどのようなポイントがZ世代にフィットしているのでしょうか。
Z世代の特徴として「多様性を重視する」ということが挙げられます。また、最近では「ジェンダーレス男子」「メンズコスメ」などの広まりによって、男性が美容に興味を持つことも珍しくなくなってきました。
これまでの百貨店の化粧品売り場は華やかで女性向けの印象が強く、接客も女性店員が多いため、男性にとっては苦手意識を感じることもあったのではないでしょうか。女性の私にとっても、百貨店の化粧品売り場を訪れる際は多少身構える気持ちがありました。
SHIROも百貨店への出店が多いブランドですが、SHIRO SELFでは接客がないことにより自分のペースで商品を選べるため、百貨店と比べてあまり気負わずに商品に集中することができます。
さらに、SHIRO SELFでは「エシカル割」という取り組みを行っています。
通常、百貨店で化粧品を購入するとしっかりした包装で商品を渡されることが多いですが、SHIRO SELFではパッケージレスを推奨しており、レジでパッケージレスを選択すると通常価格から3%値引きされます。
これはエシカルに対する興味が高いZ世代にとってもマッチしている取り組みであると言えます。
NOSE SHOP(東京・池袋)
NOSE SHOPは、個性的な香水たちを世界中から集めたニッチフレグランスのセレクトショップです。
少量生産により実現する、ボトルやビジュアル、ネーミング、素材などにブランド創業者たちのこだわりが詰まった香水が取り揃えられています。
このお店ならではの取り組みが「香水ガチャ」です。
1回700円でミニサイズ(1.5ml〜2ml)の香水をカプセルトイマシーン形式でゲットすることができます。
これまで香水はブランドごとに売られていることが多かったと思います。しかしこの香水ガチャでは、取り扱いブランドは限定することなく「トロピカル香水」「人生を謳歌するためのキーワードとリンクした香水」といったように、ブランドを横断してテーマごとに香水がセレクトされています。
このような特徴は、「マス的に提供される商品やコンテンツへの興味が薄く、自分にパーソナライズされた商品やコンテンツに価値を見出す」Z世代にフィットしています。
ランダムに商品が出てくる香水ガチャは厳密にはパーソナライズとは少し異なるものの、商品と運命的に出会うことができ、人と被ることも少ないという点で、自分だけの特別なモノとしての価値を感じられました。
また、通常サイズの香水と違って価格も手ごろなので、お金について保守的な考えを持ついちZ世代としては気軽に試しやすい点も魅力的でした。
これらの一連の体験は、単なる買い物を超えたちょっとしたエンタメのようでもありました。
私自身も思わず友達にシェアしたくなったため、体験価値を重視するZ世代にとって非常に相性の良い店舗設計なのではないでしょうか。
引き算の体験設計
これらの2つの店舗事例から、Z世代にフィットする店舗体験の特徴として「引き算」というキーワードを挙げることができます。
SHIRO SELFの場合は、これまで当たり前とされてきた接客や包装の引き算、NOSE SHOPの場合は、ブランド軸の引き算です。
これからの店舗体験を考える上では、これまで当たり前だったサービスをそぎ落とす「引き算としてのサービス」によって新たな価値を提供できる可能性があるのではないでしょうか。
出典・参考URL
https://shiro-shiro.jp/
https://shiro-shiro.jp/ext/shiro_self.html
https://noseshop.jp/collections/perfumegacha
https://www.fashionsnap.com/article/biotopeinc-noseshop-interview/
濱藤柚香子
DXディレクション事業部
大学では乳幼児の発達心理を専攻。サークルで企業協賛を担当したことをきっかけにデジタルマーケティングに興味を持ち、2020年に電通デジタル入社。ユーザー起点でのサイトディレクションや調査・ワークショップ設計業務を行っている。
※所属は記事公開当時のものです。
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