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2023.12.27

「自社らしさ」を加速させるDesign Systemを活用したDesign Opsとは~デザインメンバーによる座談会~

#コラム#デザインオプス#デザインシステム

堀田裕介 堀田裕介

デジタルサービス・プロダクトが増え続けている昨今、Design Ops(デザインオプス)、Design System(デザインシステム)というキーワードを目にする機会も多くなったのではないでしょうか。 日本ではまだあまり聞きなれないワードですが、それぞれ以下のように定義されています。

<Design Opsとは>
Design Opsは、Design Operationsの略称で、デザインの価値と影響を大規模に拡大するために、人、プロセス、技術を組織化し、最適化することです。
具体的には、課題に対する以下の取り組みを行うことを指します。
・デザインチームの成長と進化
・効率的なワークフローの作成
・デザインアウトプットの品質と影響の改善

<DesignSystemとは>
Design Systemは、デザインの概念や原則などをまとめたドキュメント、それらを具体的なデザインに落とし込むためのスタイルガイド、UIコンポーネントライブラリ、そしてそれらの管理・運用ルールや、コード化されたUIコンポーネントの管理ツールなど、さまざまな構成要素で成り立つ「仕組み」です。
デジタル時代の進化に伴い、デザインに求められるものが、製品やサービスの見た目や使い勝手から、複数のインタフェースを跨ぐシステム化へと変化しています。そこで注目されたのが、「Design System」です。
海外では既に多くの企業がDesign Systemを取り入れており、AdobeやApple、Google Material DesignやDropboxなどがDesign Systemを活用していることが有名です。
また、Design Systemはメルカリやクックパッドなどの国内企業でも取り入れられています。さらに、デジタル庁や大阪万博2025など、企業だけでなく行政でも取り入れられるなど、近年徐々に身近な存在になりつつあります。

Design Opsを推進する方法はさまざまで、電通デジタルでも複数ソリューションを開発しています。今回は、そのなかでもDesign Systemを中心に据えて、Design Opsを推進しているチームをご紹介します。

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企業らしさをUI/UXデザインに反映させるDesign Ops

Design Opsを推進するチームについて

まずはご自身とチームの関わりについて教えてください。

西田祐(以下N)
もともと3、4年前にDesign Opsについて注目して研究チームを立ち上げました。調査をするなかで、Design Systemを中心に据えたDesign Opsのフレームに辿り着きました。現在はこのフレームを活用してセールスやデザインコンサルティングをしています。

飯島麻衣子(以下I)
これまではしっかりと取り組めていませんでしたが、Design Opsを広めていくべきだと考え、去年は別領域から参加していました。

高橋優太(以下T)
企業や顧客体験のありたき姿と 、UI/UXデザイン領域が十分に紐付いていない事に関心があり、両者の橋渡しができればと思いチームに参加しています。

星野沙恵(以下H)
もともと西田さんのチームにいたこともあり、お声がけいただきました。普段からガイドラインを見ながらデザインする際に、作業しながら内容を理解することに課題を感じていたので、Design Opsの概念とDesign System構築の重要性を知り、自分の課題感とマッチしたため参加しました。

大河原志乃(以下O)
私も星野さんと似ていますが、案件の途中から参加する際に、ガイドラインの理解に時間がかかってしまうのをどうにかしたいなと思っていました。そんな時にこのチームを知り、参加しました。

インタビュイープロフィール
インタビュイープロフィール

なぜ今、Design Systemを導入するのか?

いままでクライアントワークに、どんな悩みがありますか?

(N)
最近、特に多いご相談内容は、類似サービスが増える中で、自社の独自性を顧客に伝えられない・目指すべき顧客体験を実現できないといったお悩みです。

(T)
クライアントワークにおいて、企業理念は自社のリソースの配置に一貫性を持たせる有効な手法の1つである一方で、生活者が触れるUI/UXにまで体現されることは少ない印象です。結果として、企業のありたき姿と実際に生活者が感じる企業の姿のギャップが大きくなってしまうことが懸念されます。我々のフレームは、そうした企業が描く「自社らしさ」と、実際に提供する顧客体験との間に一貫性を持たせることができるのではないかと思っています。

(H)
高橋さんの言う通り、現場でデザインを担当していても、一貫性を保てないことに課題を感じていました。複数のサービスを横断したクライアントワークの際に、一貫性の観点が欠けると、デザインの効果も薄れてしまいます。

(N)
共通するのは、電通デジタルのクライアント企業は多くが大企業であり、大規模サイトが多いということです。顧客体験を向上させるためには、統一した体験を提供する必要がありますが、現状はバラバラになってしまっていることが多いです。また、本来は顧客体験向上を検討する時間を優先したくても、実際は開発・構築に時間とパワーがかかってしまっている状態です。

Design System導入後の成果、メリットは何ですか?

(I)
Design Systemを中心にDesign Opsを推進することで、企業が目指すべき姿が明確になり、それが共通言語となることで、一貫した体験を提供することができるようになります。現在進めている案件では、UIデザインだけでなく、ガバナンスの推進も重視しています。このように、企業と一体化して取り組むことができるのがメリットです。

(N)
企業に合わせてガバナンス計画を検討するため、目指すべき組織イメージの解像度が高まります。自ずとメンバーの育成方法や採用計画を立てやすくなるのは大きなポイントです。

(O)
制作サイドにおけるメリットとしては、ガイドラインの複雑さを軽減し、作業負荷を下げられることです。

(H)
従来のガイドラインとは異なり、実際の作業中にコンポーネントを見ながら作業を進めるため、思想を理解しやすくなり、デザインの思想がより明確になります。さらに、作業が効率化できるため、本来検討するべきポイントにより集中できるようになります。

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実際にどのように推進しているのか

電通デジタル流Design System の特徴は何ですか?

(T)
電通デジタルの強みは、多様なメンバーが存在していることです。それにより、以下のような一気通貫の取り組みが可能であることが大きなな特徴だと言えます。
・自社やブランドの「らしさ」の規定
・UI/UXデザイン
・デザインシステムの構築・運用
・UI/UXの評価
・ガバナンス計画および推進
・人材育成プログラム作成・実行

(I)
当たり前ですが、フレームワークさえあればうまくいくとうわけではありません。企業によって状況はさまざまなので、状況に合わせて最適な体制を組み、それに基づいて共通のデザインシステムを構築していくことは、他社では容易にできない重要なポイントです。

具体的な案件の中で、さらにどんなポイントがあるのか?

(H)
ポイントは情熱と信頼関係です。
クライアント企業内の各担当者や協力パートナーなど、異なるフィールドで働く人々が一つの目標に向かって連携するためにはお互いの協力が必要です。ルールを定めても実践されなければ形骸化してしまい、個別の要望に過剰に応えると、一貫性のある体験を確保できなくなるため、共通の体験を目指し、チームの協力体制を構築することが最も重要だと考えます。

(T)
企業が目指すべき体験を明確に言語化・視覚化し、チーム全体で共有することでチームのモチベーションが高まります。

(O)
また、プラットフォームを構築するだけでなく、その後も組織内に浸透させることが重要です。目指すべき顧客体験の実現に向けて、組織全体で共通の言語を持つことが必要であり、浸透しやすいガイドラインの策定や啓発活動が欠かせないポイントです。

(N)
Design Opsは見た目のデザインだけではなく、持続させるためのガバナンスやワークフローなど無形のプロセスもデザインの対象になるため、より一層深く討議をしていく必要があります。

(I)
推進するためには、作業効率化だけを追求するのではなく、チーム全体が情熱を持って取り組み、その情熱がチーム外に伝わっていくような関係が理想的です。

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Design Systemの展望

Design System、これからはどう進化していきますか?

(O)
日本でもDesign Systemの導入が当たり前という状況になるのではないでしょうか。顧客体験を向上させるには、見た目のデザインを揃えるだけでは不十分になっていくと思います。

(N)
まずは企業のファンになってもらうために、企業らしさの追求は必要になってきます。その企業らしい顧客体験を提供し続けるために、体験設計や開発基盤、また組織に浸透させるプラットフォーム作りを行う必要があります。Design Opsを加速させるソリューションとしてDesign System構築は欠かせない存在となると思います。
Design Opsは、現在と未来のデザインの世界を変えていく革新的な概念です。電通デジタルではDesign Ops推進、 Design System構築に関わるメンバーが集まり、情熱を持って議論を重ねながら、顧客体験を向上させるための新しい方法を模索しています。国内でもこの取り組みに賛同いただける企業が増えている実感もあり、これからの時代において、Design Opsの概念およびDesign Systemの役割は、ますます重要になり、より一層の進化と発展が期待されています。

堀田裕介

堀田裕介

CX/UXデザイン第1事業部

2020年に電通デジタル入社後、銀行や製薬会社のサイトのリニューアルなど、情報設計を中心としたUIUX業務に携わる。調査の設計・実施や、施策立案などの案件にも携わり、 UIUXデザインおよびコンサルティングに関わる業務の幅を広げている。

※所属は記事公開当時のものです。

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