2022.11.30
転職から始めるUXデザインの旅 メーカーからの転職者の体験談
モノが過剰提供されている時代、さまざまな業界において、製品を「モノ」中心から、ユーザーと製品の関係性を一体に捉え、「ユーザー体験」にフォーカスした「コト」としてサービスを作ることが増えています。さらに、企業だけではなく、個人としても、ユーザーエクスペリエンス、サービス作りに関わる仕事に興味を持つ転職者も増えました。
なかでも、一つの業界や特定分野の体験やサービスを検討するのではなく、電通デジタルのような、クライアントのビジネスを介し、様々な業界を跨いで、幅広い領域でサービスデザインに関わることができる会社も注目されています。
事業会社からクライアントワークへ。モノのデザインからコト(UX)のデザインへ。果たして電通デジタルへのキャリアチェンジは実際にどうだったのでしょうか?
本記事は、メーカーから電通デジタルに転職した社員2名にインタビューを行い、電通デジタルにおけるUXデザイナー職へのキャリアチェンジの実態について聞いてみました。
インタビューイプロフィール:
久保竜樹
自動車関連Tier 1メーカーにて自社やOEMのカーナビインターフェース、自動運転をはじめとした先行的な事案のUI/UXデザイナーの経験を経て2020年電通デジタル入社。入社後は通信キャリアの新サービスやモバイルオーダーサービス、近未来の車の購買体験などのCX設計リードを担当。
岡部亮介
美術大学を卒業後、家電メーカーに入社。日本、北米市場に向けたスマートフォン、フィーチャーフォンのプロダクトデザインや通信機器の先行開発提案などに携わり、コンセプトから開発、量産までのデザインワークを一貫して経験。2020年電通デジタル入社。IoTサービス開発などを担当。
1.自己紹介と現在の業務内容
久保:
前職はUI/UXデザイン職で、カーメーカーの量産開発フェーズのUI設計のお手伝いや、自社製品のカーナビUI設計/デザインを主にやっていました。最後の数年はCASEやMaaSといった次世代のカーライフの体験設計やデザイナー目線での新規ビジネスのあり方を模索したりしていました。
電通デジタルに入社してからは主に通信キャリアの新規サービスの立ち上げや、未来の車の購買体験設計などをテーマとしたプロジェクトで、サービスデザインやユーザー体験設計を担当しています。
岡部:
前職は家電メーカーで、具体的には携帯電話に関わるプロダクトデザインのコンセプトから造形、CMF( COLOR(色)MATERIAL(素材)FINISHING(加工))、3Dモデリング、最終的に量産に向けた導入作業までやっていました。
電通デジタルでは、UI/UXデザイン業務とアートディレクションの他、最近はIoTなどのプロダクトデザインの仕事が多くなっています。
2.なぜ電通デジタルに目を向けたのか?
電通デジタルに転職されたきっかけを教えてください。
久保:
実は社会人のキャリアはプロダクトデザイナーからスタートしたのですが、カーオーディオからカーナビメインに市場が移っていく流れでGUIデザイナーにキャリア移行し、更に自動運転やカーシェアといった車のサービス化の流れに伴う業界の大変革に合わせて、体験自体のデザインやCXの重要性を強く意識するようになったのがきっかけです。
岡部:
私は電通デジタルに興味があるというより、デジタルを自分の専門領域と繋げていかないと、現状のままでは時代に取り残されてしまうという自分の中で危機感がありました。
前職では、UXの部署もありましたが、基本的にはUIのデザインをメインにやっており、デザイン業務の領域が少し狭く感じていました。
転職活動を始めた時、あまりピンと来る企業が見つからず、一度活動を休止しました。その時期に視野を広げるべく、社会人向けのインターンを検索してみました。そこで電通デジタルの体験型ワークショップに見つけて参加し、電通デジタルの仕事を知ることになりました。
久保:
私も同じ体験型ワークショップから電通デジタルに入りました。前職でもサービス企画や体験設計などを試行錯誤でやっていたのですが、少し行き詰まりを感じていたのと、何より他業種のUXデザイナーがどのようなスキルセットを持っているのか、どのようなアプローチでCXにコミットしていくのかに興味があり、勉強と腕試しの気持ちで電通デジタルのワークショップに参加してみました。
体験型ワークショップに参加し、どんなところが良かったですか?
岡部:
ワークショップの内容も良かったのですが、全く別の会社に勤める人たちとチームを組んで、一緒にディスカッションする体験がすごく良かったです。
久保:
実際のPJ内でワークショップなどの体験設計プロセスが体系立てて運営されていることが、刺激的でした。これを毎日やっている仕事が良いなと思いました。
ワークショップ後、電通デジタルへの転職を決めた時、不安を感じたことがありましたか?
久保:
ワークショップを経て、自分の仕事のイメージができた一方で、周りに今まで携わったことがないマーケティング業界の方が多かったので、会話の中でわからない用語も多く、不安もありました。
岡部:
私の場合はUXに興味がありましたが、広告やプロモーションにはあまり興味がありませんでした。何よりハードウェアを専門としていた自分が、デジタルの会社にどのように関わっていけるか期待と不安が入り混じっていました。
ただし電通デジタルでは幅広い業務をやっているが、きちんと部署ごとに役割やミッションが決まっていて、私が所属した組織は私のベクトルと合ったので不安は払しょくできました。
3.実際、転職直後思ったこと
イメージと違って意外だったところはありましたか?
岡部:
意外だったのは、思った以上に個人の裁量が大きく、個人単位で動けること、業務の幅も広いことです。私が所属している事業部は専門職が多い事業部ですが、それでもまだビジュアルデザインからサービスデザイン、メタバース領域まで、業務範囲はかなり広いと思います。
久保:
意外という点では無いのですが、プロジェクト進行のスピードとプロジェクトのサイクルの早さに初めは驚きました。
事業会社の場合は基本的には一つのプロジェクトを長期間かけてじっくりと進行するというパターンが多いと思うのですが、電通デジタルではコンサルタント業務であるということもあり短期間でアウトプットを求められることが多く、とにかくTOPスピードで走り続けられることが求められます。
例えば私が支援させて頂いているCX案件では、ワークショップ、コンセプト策定、情報設計、効果検証、改善までの一連の支援を2~3ヶ月ぐらいで行うことがよくあります。
実際入社して、業務する時の難しかったところ、良かったところはありましたか?
久保:
良いところで言うと、多種多様な業界のクライントがいるので次々に新しい知識の習得ができる点です。反面、かなりのスピードで知識習得やクライアント企業への最適化が必要になるので、その点は大変ですね。
岡部:
クライアント企業の支援会社だからこそ、様々な企業、様々な業界を知らなければいけないことでした。過去の案件で学んだことを次の案件に活かせるなど、業界を超えて横展開できる面白さがありました。職場環境、例えばオフィスがきちんとリニューアルされること、リモート体制に入るのが早いといったことも良かったです。ダイバーシティ研修が充実しており、どんな従業員も年齢性別問わず対等に接するような環境であるところも魅力的でした。
一方、入社当時大変だったことは、事業会社からクライアント支援会社へ移ったことで、働き方が大きく変わり、仕事の進め方や時間の使い方が変わったことですね。
4.電通デジタルで2年働いて、思ったこと
入社から2年経ち、代理店出身者と違って、前職の経験を意外と活かせたところはありましたか?
岡部:
前職では10年間同じことやってきたので、一つの専門性を深掘りできたことが大きな武器になっていると思います。メーカーでの通信機器のデザイン業務経験は意外と電通デジタルと親和性が高く、活かせるところが多かったです。また、大手事業会社に在籍していたことでクライアント企業の立場に立って考えられることも強みです。
久保:
私は前職が車関連の業種だったということもあり、バックグラウンドとしてはどちらかというとリアルを中心とした体験を描くことに専門性を持っていますが、電通デジタルに入ってからデジタル体験構築の知見を得たことで、リアルとデジタルの両方の知見を活かした深い体験を描けるようになっています。もちろん、リアルとデジタル両方の体験を描けるスタッフは他にもいますが、体験のリアリティさにおいてクライアント企業から評価をいただくことが多く、この辺りは専門性を持っている自分にしかできない大きな強みと思っています。
あと、岡部さんの言う通りクライアント企業の気持ちがわかるというのもそうですね。例えば資料の作り方や説明の際に、メーカー内部の体制やつまずきポイントが想像できることで、ここは技術部門からのハレーションが起きるだろうから丁寧に説明した方が良いだろうと勘所が働くこと、また、説明時に用いる用語一つとってみても、IT系のメーカーでは理解できるが、製造業では聞き慣れない言葉なので噛み砕いて説明しようなどの心使いができます。小さなことですが、コンサルティングという職種上、アドバンテージがあると思っています。
5.今後の目標
今後の目標を教えてください。
久保:
引き続きサービスデザイン、体験設計の領域を深めて行きたいと思っています。あと、いつかは電通デジタルとして体験に優れた独自のサービスを創り発信していきたいなと、妄想段階ですが考えています。
岡部:
電通デジタルでチャレンジしたかった本格的なプロダクトデザイン案件に取り組みたいです。デジタル×リアルのIoTサービスの領域拡大は主要なテーマです。
IT業界ではUI/UXという括りで語られますが、UXの表層は必ずしも画面内のUIだけではなく、フィジカルなプロダクトも関係していきます。UXとハードウェアを繋ぎ、UXプロダクトという捉え方を一般的にしていきたいです。
6.メーカー(事業会社)から転職される方への一言アドバイス
最後、同じくメーカーからの転職を考えられる方に、一言アドバイスをお願いします。
岡部:
メーカーに所属していた際に感じた、担当領域が狭く感じることは電通デジタルではないです。一方で、一つのことに集中して深掘りしていくことは電通デジタルでは不向きかもしれません。良いところと悪いところどちらもありますが、一つはっきりと言えるのは、電通デジタルに転職する経験は私の人生にとって必要なことでした。専門性を広げるような新たなチャレンジがしたい人にはとてもおすすめの環境です。
久保:
電通デジタルではサービスデザインの最先端のノウハウを知り、施策を考案し、実行することができるので、UIデザイナーはUXデザイナーへ、UXデザイナーはサービスデザイナーへのステップアップが可能な環境であると思います。この領域を深めて行きたいと思っている方にはかなりお勧めです。
馬 問津
CXクリエイティブ事業部
顧客体験とクリエイティビティを起点として、サービスのアイディエーションから形にするUX、UIまで、一気通貫でデザインすることを得意とする。最近では、インクルーシブデザイン観点のデザインシステムの規定、SDGsの取り組みとユーザーモチベーションを繋げる新規サービスの設計、立ち上げ支援を行っています。
※所属は記事公開当時のものです。
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