SHARE

2021.12.16

今日から始める!UXライターではない方のための、UXライティングの基本

#UXデザイン#エクスペリエンスデザイン#ナレッジ・ノウハウ

高野礼生 高野礼生

近年、ユーザー体験上の言葉・文章に焦点を当てたUXデザインの一分野である「UXライティング」に関する書籍や記事を目にする機会が増えています。

また、UXライティングの専門家である「UXライター」というポジションを設ける国内の企業も現れています。

しかし、企業と顧客の接点が多様化する中、UXライターだけではなくUXやマーケティング全般を担当する方もUXライティングの基本的な知識を身に着けることが求められるのではないでしょうか。

本記事では、UXライターではない方がUXライティングを始めるためにおさえるべき基本をお伝えします。

UXライティングとは何か?

人間中心設計推進機構 (HCD-Net)は、UXライティングを「利用者が(製品やサービスを)使い始める前から一貫して、体験価値を高めるタッチポイントとして、利用者が目に触れる短いメッセージや表現する技術」と定義しています(出典1)。

すなわち、UXライティングはカスタマージャーニーを通して発生するユーザーとサービス間の接点において、ユーザーが意図する行動をストレスなく完了させること、またサービスに対する好感・共感を持つことを促すために活用される文章表現の技術だと言えます。

サービスの利用の検討段階に関わるUXライティングの例として、Dropboxのホームページ(図1)を見てみましょう。

ファーストビューに表示されるメッセージは、オンライン上でのファイル管理・共有の効率化というサービスが解決する課題を端的に伝えることで、ユーザーが共感を持てるよう促しています。

また、右上のCTAボタンにはユーザーを主語にした「利用を開始」 という平易な表現を用いることで、トライアル利用や購入の意向を持ったユーザーが迷うことなくスムーズに手続きに移れるよう促しています。

これらのサービスサイト上のコピーやCTAボタンの文言の表現は、UXライティングが活用されている一例であると言えるでしょう。

また、サービス利用開始後の体験においても、オンボーディング時のポップアップやFAQサイトの説明文、プッシュ通知、エラーメッセージといった箇所で、UXライティングは活用されています。

図1:「Dropbox」のホームページ内キャプチャ
図1:「Dropbox」のホームページ内キャプチャ

なぜUXライティングが重要なのか?

UXライティングがあらゆる接点で活用されていることを説明しましたが、例として挙げた接点自体は新しいものではありません。

そんな中、近年UXライティングが注目されるようになった背景は2つあると考えられます。

1つ目の背景は、顧客体験を重視したマーケティングやUXの重要性が高まっているからではないでしょうか。

しかし、マーケティングとUX双方に一貫して関わる、言葉を用いたコミュニケーションに課題があると、顧客体験全体が損なわれてしまう可能性があります。

したがって、これらの企業のマーケティングやUXの課題解決のために、UXライティングを意識したコミュニケーションが重要なのです。

2つ目の背景として、コロナ禍において企業と生活者間でのオンラインの接点が増加していることも挙げられるのではないでしょうか。

これまではスマートフォンの端末やプランを変更する際は、携帯ショップで店員と直接相談をしながら手続きを進めることができました。
しかしコロナ禍では、オンラインで手続きを進めるようになり、その過程で触れる接点において、ユーザーが一人でも違和感なく理解して目的の行動を果たせるような説明・表現の重要性が一層増していると考えられます。

どうやってUXライティングを実践するのか?

実際にUXライティングに着手しようと思った際に何から始めると良いのでしょうか?

まず重要なのは、「ユーザー視点での文章の書き方や文言の選び方を意識すること」です。

今回は、例とともに具体的なポイントを5つ紹介します。(出典2

1.1つの文に1つのメッセージを込め、文を簡潔にまとめる

UXライティングに限らず、ビジネス上の書き言葉・話し言葉一般として、一文を短くすることが推奨されます。一文が短いことで、読み手は各文とそのつながりをスムーズに理解できるようになります。特に修飾語句がつくと文が長くなりやすいため、一文が長いと感じたら複数の文に分けると良いとされています。

(例) 改善前:以下のフォームを入力することでお申込みができますが、不明点がある場合はメールまたは電話でご連絡ください。
改善後:お申し込みの際は、以下のフォームをご記入ください。また、不明点がある場合は、メールまたは電話でご連絡ください。

2.丁寧さのさじ加減を心得る

目上の方へメールを送る際は、相手の反応が直接見えないからこそ敬語を使う場面が多々あるかと思います。
しかし、同様の配慮をユーザーとの接点上で行うと、一文が読みにくくなるだけでなく、ユーザーとしても違和感を持ってしまいます。
ユーザーに親しみを持ってもらうためにも、過剰な敬語・丁寧表現は避けた方が良いでしょう。

(例) 改善前:SMS上にお送りした、パスワードをご確認頂きますよう、よろしくお願いいたします。
改善後:SMS上でパスワードをご確認ください。

3.日常感覚に合った言葉を用いて、読み手に語りかけるように書く

接点上で極端に堅苦しい文章や専門用語を多用することで、ユーザーが文章を読むモチベーションが下がってしまう可能性や、そもそも文章を理解できない可能性もあります。
そのため、なるべくユーザーが主体となった際に使用する平易な言葉・表現を接点上でも利用することを意識することが重要です。
また、会話の際に用いる柔らかい表現を意識すると、丁寧さとのバランスをとることができるようになります。

(例) 改善前:メール配信が深夜に行われる場合があります。
改善後:メールが深夜に届く場合があります。

4.ユーザーにとって、「何ができるようになるのか」を書く

UXライティングを活用する際は、ユーザーに分かりやすい文章で伝えるだけではなく、ユーザーに何らかの行動を促すことを目的とする場面がほとんどです。
ある行動をとることで、ユーザーにとって何が起こるのか?または何ができるようになるのか?を具体的に提示することで、ユーザーの行動を促すことができます。

(例) 改善前:利用を開始するには、メールアドレスとパスワードを登録してください。
改善後:メールアドレスとパスワードを登録すると、初月無料ですぐに音楽を楽しめます。

5.行動をとるためのヒントを提供する

ユーザーが何らかの行動にとる際に、問題なく完了できるとは限りません。
ユーザーがカスタマージャーニー上でつまずいてしまった際に、その状況を打開するための具体的なヒントを提示することで行動を完了できます。

(例) 改善前:パスワードを入力してください。
改善後:パスワードを入力してください。(英数字それぞれ1字以上、合計6字以上)

以上のポイントを意識することで、「ユーザーが言葉や文章を読み、スムーズに理解すること」と、「文章を理解したユーザーが、(書き手が意図した)何らかの行動をとること」を促し、より良いユーザー体験づくりに貢献することができます。

またこれらのポイントに加えて、ユーザーからのフィードバックを取り入れながら継続的に改善を図ることも重要です。

例えば、プロトタイプを用いたユーザーインタビューやABテストを実施して、定性・定量双方の観点から効果的なUXライティング検証などが挙げられます。

おわりに

リモートワークの普及に伴い、文章でコミュニケーションをとる機会は増えています。

社内のメンバーを仮にユーザーと見立て、前の章で挙げたUXライティングのポイントを日々意識してコミュニケーションをとるだけでも、少しずつ基礎を身に着けることができるのではないでしょうか。

その上で、製品やサービスにUXライティングを実際に活用できる場面が浮かんだ際は、テクニックの活用に加えて、ユーザーの声をもとに継続的にPDCAサイクルを回すといった改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

出典・参考URL

出典1:特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構  (HCD-Net,2020)
HCD(Human Centered Design)の 考え方と基礎知識体系 報告書
https://doc.hcdnet.org/hcdbasic_report.pdf
出典2:ビジネスマンのための新教養 UXライティング (髙橋慈子・冨永敦子,2020)
https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798167459

高野礼生

高野礼生

DXディレクション事業部

2021年に電通デジタル入社後、通信会社のデジタルマーケティングの支援に従事。ソーシャルメディアの運用ディレクションや、WebサイトのUX改善に関わる業務を担当。

※所属は記事公開当時のものです。

RELATED REPORT

EXPERIENCE+は、株式会社電通デジタルが運営しているUXデザインメディアです。

ビジネスに役立つUXデザインのナレッジ・ノウハウについて、コラムやインタビュー、
体験レポートや書評コラムを通して発信しています。

サービスの詳細や詳しい説明をご希望の方は、こちらのボタンよりお問い合わせください。

CONTACT お問い合わせ