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2021.07.16

ニューノーマルにおける業界別トレンド#1【教育】~CES2021より~

#イノベーション#グローバルトレンド#セミナーレポート

濱藤柚香子 濱藤柚香子

はじめに

2020年、新型コロナウイルス感染症の流行によって社会は大きな変革を迫られました。リモートワークの普及や「おうち時間」の重視など、私たちの生活様式も大きく変化しました。 顧客体験を考える上でも新しい生活様式への配慮は不可欠です。コロナ禍での変化を一時の流行ととらえず、今後も定着していくものとして、ニューノーマルにおける各業界のトレンドやソリューションを理解していくことが私たちには求められています。
2021年1月に開催されたCES2021(※1)では、ニューノーマルに対応した各業界のトレンドが多く発表されていました。本シリーズでは、ニューノーマルにおける各業界(教育/デジタルヘルス/家電・IoT/自動車/リテール)のトレンドおよびUX目線での考察を全5編にわたって紹介していきます。 なお、本シリーズ全般で引用する数値・各種事例は、特に記載がない場合CESの講演内容からの引用になります。

※1:CES®は世界で最も影響力のある技術イベントです。世界的な企業が画期的な技術を紹介したり、最先端のイノベーターによる講演が実施されたりします(出典1)。これまでは年に1回ラスベガスで実施されていましたが、今年はオンラインで開催されました。2021年1月11~14日に全世界で配信され、167の国や地域から83,202人が参加しました。(出典2

サマリー(教育)

教育関係のセッションでは、デジタル教育市場の変化やコロナ禍でのオンライン学習の発展について、Coursera, Class Dojo等の事例を用いて説明されていました。他にも、オンライン学習において今後注目されるテーマについても米国の事例を中心に紹介されていました。

世界のデジタル教育市場の変化

過去10年間で、ベンチャーキャピタルによるEdTech(※Education×Technologyの造語)企業への投資額は100億ドルまで増加したと述べられています(出典3) 。また、過去5年間でデジタル教育に関するユニコーン企業(※2)は32社誕生したそうです(出典3)。このように、デジタル教育市場は昨今どんどん拡大しています。
さらに2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響によりオンライン学習が急加速しました。教育業界は、インタラクティブ性の高いオンライン学習システムによってより効率的な学習環境を整えることを目指しています。
デジタル教育市場は今後ますますの成長が見込まれており、2020年現在1600億ドル規模の市場が2034年には1兆ドル規模になるといわれています。(出典3

※2:企業としての評価額が10億ドル(約1250億円)以上で、非上場のベンチャー企業(出典4

急速に広がるオンライン教育プラットフォーム(Coursera、Class Dojo)

ここからは、2020年にユーザーが急激に増加したオンライン教育プラットフォームについて紹介していきます。
Couseraは世界中の大学の授業のいくつかを無償でオンライン上に提供している教育プラットフォームです。2020年7月~2021年1月の半年で247%のユーザー増加を記録しました。Courseraの特徴は、自分の作業画面と指導者のビデオ画面、共同作業者の作業画面の3要素を一つの画面内で見ることができる点です。通常のビデオ会議システムと異なり、オンライン学習に特化したUI設計がなされています。他にも、ブラウザ上で利用できるサービスのためスペックの低いPCを持つ学生にも負担にならない、といったような特徴がありました。

Class Dojoは、メッセージ機能・ポートフォリオ・フィードバック機能によって小学校の教師、児童、家族をつなぐアプリです。児童がアップした成果物の画像に対して先生がフィードバックしたり、先生から保護者にメッセージを送ったりといったコミュニケーションを一つのアプリ内で行うことができます。このアプリは過去半年で登録数5倍、エンゲージメント5倍の増加を記録しました。先生から児童への一対多数のコミュニケーションになってしまいがちなオンライン学習において、先生と児童、さらには保護者も交えて個別のコミュニケーションを円滑化するという点で大きな価値を提供したのではないでしょうか。

今後注目される教育テーマ

今後注目されるテーマとして、社会人になってからも学び続けるという考え方である「生涯学習」や、バーチャル体験を通して学べる「XR」、就職活動支援の一環として大学が教育プログラムを提供する「Hire-ED」などが挙げられています。他にも、企業が福利厚生として従業員に提供する教育にフォーカスしている「Guild Education」という企業にも注目されていました。
デジタル活用によって、子ども・学生だけではなく、大人も当たり前に受けるものとしての教育の広がりが期待されます。そのため、顧客体験の視点ではオンライン教育プラットフォームに対して「どんな年代の人にとっても使いやすいUI」が不可欠となるでしょう。

おわりに

新型コロナウイルスの影響でオンライン学習は一気に普及しました。オンライン学習には、感染予防のみならず、地域間の教育格差の解消や移動の短縮による時間的・金銭的コストの削減など様々なメリットがあります。さらに、録画形式のオンデマンド授業では好きな時間に・繰り返し受講することができるため、学生のみならず仕事や育児に忙しい大人にとっても便利な学習スタイルです。そのため、感染が収束した後もオンライン学習は定着し続けるでしょう。

(参考文献・資料)

・出典1:ABOUT CES 
https://www.ces.tech/international.aspx
・出典3:REIMAGINING THE FUTURE OF EDUCATION – CES 2021
https://www.cesbroll.com/videos/reimagining-the-future-of-education-ces-2021/

濱藤柚香子

濱藤柚香子

DXディレクション事業部

大学では乳幼児の発達心理を専攻。サークルで企業協賛を担当したことをきっかけにデジタルマーケティングに興味を持ち、2020年に電通デジタル入社。ユーザー起点でのサイトディレクションや調査・ワークショップ設計業務を行っている。

※所属は記事公開当時のものです。

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